野良猫問題に少し深く関わってくるようになると出会う「TNR」という言葉。
おそらく、猫好きでもなく、動物愛護に関心もあまりなく、野良猫に困っていないような方にとっては、ほぼ馴染みのない言葉だと思います。
こちらでは、TNRの定義や効果、起源などを先にぎゅっとまとめて、深く知りたい、ちょっと興味がある方はその先を読み進んでいただければと思います。
TNRとは?簡単なまとめ
T rap 捕獲N euter 不妊去勢手術R eturn 元の場所に戻す
主目的は、野良猫の繁殖を抑えて、自然淘汰で数を減らしていく活動です。上記の頭文字を取って「TNR」と呼ばれています。多くの場合は、手術済の猫の耳先をカットして、手術済であることをわかりやすいようにしています。
日本では、1990年代に滋賀県で開始されたのが起源と言われています。
期待される効果としては、
- 数の減少(時間を要する)
- 野良猫による苦情の減少(ケンカ・尿スプレー・鳴き声が抑えられる)
- 猫の生活環境の改善
- 里親・新たな飼い主への譲渡率の向上
- 人と猫との共生
主目的は、数の減少。その他の目的として、
人側:猫による苦情の減少猫側:健康と生活環境の改善
これらの改善が進んだ結果、「人と猫との共生」が挙げられる。と言ったところでしょう。これには、数が減少しなければ苦情の減少もある程度しか得られないでしょうし、猫もTNR後の給餌、健康管理などをしてもらえなければ生活環境の改善とは言えないでしょう。このためTNRの継続的な実施と実施のための猫の数・個体管理、給餌、健康管理も活動に含まれています。
TNRの起源
欧米では
1970年代以降、動物に携わる学者や動物愛護の活動家、グループなどの草の根運動のような形で開始されます。この活動を進める過程で、野生の猫の個体数把握、地道な不妊去勢手術、継続的な管理と実施を経て、一定の効果を挙げ、これらの活動が学会やシンポジウム等で取り上げられることで個人から地域、地域から自治体へ広まり、全国へ広まったようです。
日本では
1990年代に、特定非営利活動法人Japan Cat Network(以降JCN)によって、TNR活動が滋賀県で開始されました。JCNは、アメリカ人留学生2名よって設立され、病気や瀕死の猫達を助けるために始めた活動なのだそうです。
※現在は、特定非営利活動法人の認可は取り消されています。(JCNの外部リンクは付けないことにしました)※内閣NPOのHPで解散理由を見る限りでは、特定非営利活動促進法の第43条の規定による認可の取り消しのようでした。(事業報告書の未提出もしくは、今はもう日本で活動していないのかもしれません)
また、日本では「さくらねこ」とも呼ばれます。
公益財団法人どうぶつ基金による活動「さくらねこ無料不妊手術」で、さくらねこTNR(TNR先行型地域猫活動)と呼ばれています。「さくらねこ」の呼称は、2012年10月のTNR実施の際、どうぶつ基金の理事長と編集者との取材の中で、呼び名が発案されたのが元なんだそうです。
TNRのその他の呼び名
前述のさくらねこの他にもいくつか呼び名があります。
TNSR | TNRに「Spay:去勢」を加えたもの |
TNVR | TNRに「Vaccinate:ワクチン接種」を加えたもの |
TVHR | Neuterを「Vasectomize:精管切除 hysterectomize:子宮摘出」に置き換えたもの |
TNR | 頭文字は一緒だがRがReturnではなく、「Release」と呼ぶもの |
いずれも目的や目標は同一のものなので、TNRが定着するまでに派生した様々なバリエーションの言葉だと思います。
耳先カットの意味
不妊去勢手術のされた猫の多くは、耳先をカットされます。これは、不妊去勢手術済ということがわかりやすいようにするためです。
オスは右耳。メスは左耳。などオスメスの見分けが付くように耳先カットのルールを設けている地域もあります。
また、耳先のカットは、真っ直ぐカットしたり、V字型にカットされたりとあります。人の手でカットされたことがわかるようにTNRされた猫のほとんどは、V字カットにしていると思います。
TNRって意味あるの?活動を疑問視・問題視する人達もいる
難しい問題。話せば長くなりそうなので、短めにそういった方達の意見をまとめ
- 結局、糞尿被害がなくならない
- 明確な成功事例が見当たらない(欧米では即効性がなく問題提起されている)
- 助成金(税金)の無駄使い
- 希少動物の捕食による絶滅の危惧(TNRしたって捕食は止まらない)
- TNR(Trap No Return)でいいんじゃないか
- TNRした後って放置?管理してるって、それ管理してるって言わないから
厳しい。難しい。
以上になります。