地域猫活動の実態。福岡市の活動検証結果を見るに成功とは程遠い

 地域猫活動は今では広く知られるようになっていますが、行政や地域猫活動を行う団体から詳細な報告書や活動の検証結果がほとんど公表されておりません。

近年各自治体では地域猫活動を支援する動きが広がっておりますが、すでに数年、10年近くと続けてこられている自治体も多くあります。

しかし、地域猫活動の広がりや奨励する内容をニュースや自治体の広報などで見かけるものの地域猫活動の成果が情報開示されていないのが現状です。

その中で、福岡県福岡市では平成21年10月から開始された「福岡市飼い主のいない猫との共生支援事業」に関して、5年経過した時点で地域猫活動支援の検証をされており、福岡市のHP上でも公開されております。

こちらの記事では検証結果の内容を見つつ、福岡市の地域猫活動5年の結果に関して管理人のコメントを付けました。

※以下のドキュメントを参照し引用しています。


『地域猫活動地域のアンケート調査結果概要』
http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/53148/1/7.pdf?20170313134756


『地域猫活動支援の検証について』
http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/53148/1/3.pdf?20170313134756


※上記は『平成27年度 第1回 福岡市動物の愛護と管理推進協議会』の議事の一部になります。

▼目次

  1. 地域猫活動支援の検証の調査方法
  2. 調査結果からガイドラインを軽視した活動の実態が見える
  3. 福岡市の活動検証結果を見るに成功とは程遠いもの

地域猫活動支援の検証の調査方法

『地域猫活動地域のアンケート調査結果概要』に記載の調査方法は、アンケート方式。活動者と地域住民へのアンケートの2通りに分かれます。

活動者には、聞き取りによる方法で。
地域住民は、調査票をポスティングし、回答を返信するというものです。

アンケートの母数

調査地域(活動者) 27地域
調査地域(地域住民) 29地域
地域住民の回答数 513票

地域数に差があるのは、活動の代表者と連絡がつかないなどの理由により実施できない地域があったとの記載がある。(3地域)
地域住民の回答に関しては、一部の地域で回答が得られなかったものだと思われます。

調査結果からガイドラインを軽視した活動の実態が見える

以下は『地域猫活動支援の検証について』から調査結果の概要を引用

※※※※※ ここから引用開始 ※※※※※

(1)活動者へのアンケート調査(聞取り)

①目的・目標

  • 無料の不妊去勢手術が目的となっている 52%
  • 手術に対する支援期間の終了をもって解散している所がある

②猫やトイレの管理

  • 個体識別,個体管理:かなり悪い しかし 感覚的には「減った」85%
  • エサ場の管理,給餌方法:「置き餌」41%
  • トイレの管理,清掃活動:活動実態が見えない トイレ「減った」48%

③地域へのフィードバック

  • 「報告していない」及び「途中でやめた」67%

④継続性・持続性がない

  • 「続いていない」 22% 続けている所も給餌のみと言うところが多い
  • 資金集め 「活動者負担」のみ 33%
  • 活動者 「減った」70%

⑤総合評価

  • 全地域の活動者が「活動してよかった」

⑥その他要望事項

  • 支援期間の長期化・延長
  • 猫運搬の援助
  • 広報の充実

※※※※※ 引用ここまで ※※※※※

以下、管理人のコメントです。

目的をよくわからずに活動されている

『無料の不妊去勢手術が目的となっている 52%』

『個体識別,個体管理:かなり悪い しかし 感覚的には「減った」85%』

地域猫活動の大事なことが欠けています。
目的はあくまで飼い主のいない猫の数を減らし、最終的にはなくすことです。
不妊去勢手術は手段であって目的ではありません。

加えて、飼い主のいない猫の数を減らしていくことを考えると個体管理(頭数管理)は非常に大切です。
地域猫の頭数が把握できなければ地域猫活動を終了することができません。数を減らせているか目的に沿った活動が行えているか把握ができません。不妊去勢手術を漏らさずできているかもわかりません。

ゆえに、個体識別、個体管理が「かなり悪い」という回答は全くもっておかしいことなのです。

さらに、個体管理ができていないということは、給餌の量やトイレの数も適切だとは言いづらい状況であるかもしれません。

地域へのフィードバックはやはりあまりないもの

『「報告していない」及び「途中でやめた」67%』

地域猫活動のガイドライン等には「地域猫活動がきっかけとなり、地域のコミュニケーションが活性化する」なんて話もよく目にします。

約3分の2が地域への報告を行っていないところを見ると、特定の住民とのコミュニケーションが活性化しているだけだということです。

以下、地域住民へのアンケート項目『問 20 地域ねこ活動により地域住民どうしのつながりはどうなりましたか。』

アンケート結果のグラフ

継続性・持続性がない

地域猫活動自体、一代限りの猫の面倒を見るという役割が含まれるので、継続性や持続性は最初から必要なことがわかっているはずです。『「続いていない」 22%』もあるのは無責任だと言われても仕方ないと思います。

こんな状況で総合評価は「活動してよかった」

目的をよくわからず活動し、地域への報告はせず、継続もできていない。他にも置き餌有り、トイレや清掃活動の実態が見えないというアンケート結果もあります。
これを以って『全地域の活動者が「活動してよかった」』というのはいかがなものかと思いました。

管理人の考えでは『地域猫活動支援の検証について』を見る限り、猫の面倒を見たい、餌やりしたいだけが目的の活動と誤認されてしまっても仕方ないものだと思います。

以下は、地域住民へのアンケートの調査概要

※※※※※ ここから引用開始 ※※※※※

(3)地域住民へのアンケート(ポスティング)

①活動を続けた方が「良い」 81%
②活動への参加意向は低い 「参加したい」 知らなかった人の 17%
「参加したことがある」 知っていた人の 12%

※※※※※ 引用ここまで ※※※※※

続けた方が「良い」81%って多いですね

『 ①活動を続けた方が「良い」 81%』という結果は、かなり理解が得られているな。と管理人も最初は思いました。

ただしアンケート方式の調査なので、問いの内容と言えば、今後も続けた方がよいと思いますか?くらいの設問です。少しでもよくなるならと考えれば、多くの方が「良い」を選ぶのではないでしょうか?

もう少し情報を加えてあげると結果は違ったかもしれません。

福岡市では、不妊去勢手術に助成金を出しています。助成額は、7,500円です。
このうち福岡市から3,750円、福岡市獣医師会から3,750円が助成されています。

また、平成21年10月~平成26年度末まで、に60地区1,413頭の不妊去勢手術を実施してきたとあります。

助成額は、3,750円×1,413頭=5,298,750円

500万円以上の助成金=税金が投入されているということになります。

この情報が加わると使ったお金に対して効果があるのかないのかも問われることになります。活動の実態を明かさずに、続けた方がいいか悪いかを問うても結果に意味があるとは限らないということです。

また、活動の評価の記載もありますが『(1)活動者,住民ともに活動全般には好意的』としていますが、書き手の主観が入っています。好意的ではなく「続けた方が良い」と回答しているだけです。

福岡市の活動検証結果を見るに成功とは程遠いもの

アンケート結果のグラフ

上記は、活動者へのアンケート『問6-1 置き餌の有無』です。
有効回答の半数で置き餌があることにも驚きました。(正直とも言えますね)

置き餌があると衛生面の問題は当然のこと、カラスや土鳩なども集まる原因にもなりますし、猫とは別の問題も引き起こしかねないものです。置き餌される場所の近隣住民はたまったものではないでしょう。

「活動して良かった」「活動を続けた方が「良い」」と言った回答が多数ではありますが、福岡市の地域猫活動は成功とは程遠いと思われても仕方ないものだと思いました。(平成27年時点の実態です)

自治体が補助金や助成金といった名目で活動を支援している場合、少なからず私達の税金が投入されています。税金を使って行われる活動ですから費用をかけた分、住民にその成果を還元する必要があります。もしあまり効果がないのであれば、それはおかしいことだと思います。

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のらねこらむ管理人

2017年4月に新居へ引っ越した直後から野良猫に悩まされる。
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