先日、保護犬ビジネスについて記事を公開したところ、読者さまから以下のようなご連絡をいただきました。
「保護犬団体アニフェアについてはどのようなお考えですか?保護ビジネスではないかと噂されています。もしよろしければご意見、感想などお聞かせください」
省略をしておりますが要旨としてはこの通りです。
アニフェアについては様々なお話を耳にします。しかしながら保護ビジネスであるかどうかの判断は難しく、人それぞれの受け取り方次第かもしれません。当然、表向きは一般社団法人であり営利目的の団体ではありません。行政から勧告や是正措置を取られるようなお話も聞かれないと思います。寄付金が高額である話もよく耳にしますが、寄付するかしないかは任意であり強制ではないとしています。仮に寄付金を支払わないとお迎えができなかったとしてもアニフェアからお断りの理由を『寄付金の支払いがない為』とするようなこともないと思います。結果的に里親になられ方々が寄付金を必ず支払っていたとしても双方合意の上でのことだと思いますので問題はないのだと思います。
所感は以上になりますが、本記事ではアニフェアの公式HPに掲載の保護犬情報を調べた上、管理人が気になった点を取り上げてみました。
※2025年5月6日時点で掲載の保護犬104頭を元に調査した上で記載しております。
▼目次
- 雑種がいない
- 小型犬ばかり
- ブリーダーから保護した犬ばかり
- 雌(メス)の割合が8割=繁殖引退犬?
- トライアルがない
- 保護犬と対面せずに譲渡手続きが可能
- 高額なお迎え費用(譲渡費用)
- 誠実とは言えない利用規約(免責条項)
雑種がいない

犬種別で見た場合、ミックス犬が5頭いるのみで他は全て血統種でした。ミックス犬は広義では雑種扱いする場合もありますが、マルプー(マルチーズ×トイプードル)など販売目的で人為的に作られた動物は純血ではない血統種と考える場合もあります。
飼い犬の場合、猫に比べると圧倒的に雑種は少ないのは確かです。しかしながら保健所に収容された犬は血統種より雑種の方が多いというデータも存在します。(Life Investigation Agency (LIA) の平成29年度(2017年度) 「犬種別」殺処分リスト で調査結果を閲覧できます。-> http://blog.livedoor.jp/liablog/archives/1933937.html)
保護犬であるならば雑種も少なからずいてもおかしくないと思うのですが、確認した時点では掲載の保護犬に雑種はいませんでした。アニフェアで雑種は、ほとんど扱われていないか扱われていても稀であるのだと思われます。
小型犬ばかり
犬種を見てみると人気のチワワ、トイプードル、ダックスフンドはやはり多いようです。
また、その他の犬種を眺めてみても小型犬の犬種ばかりであることに気付きます。ブルドッグ、柴犬は中型犬に分類されると思いますが他は小型犬ばかりです。ましてやゴールデンレトリバーやラブラドール、ハスキーのような大型犬は見つけられません。
小型犬ばかりであるのもアニフェアの保護犬の特徴と考えてもいいのだと思います。
ブリーダーから保護した犬ばかり

アニフェアの保護犬募集のページでは、保護犬の紹介文が掲載されておりその中で保護理由についても触れられています。2025年5月6日に掲載の保護犬にて確認した保護理由の内訳が以下となります。(計104頭)
6頭がやむを得ない事情で飼えなくなった子98頭がブリーダーの元で里親募集をしていた子
このような結果でした。約94%がブリーダーの元から保護したことになります。加えて98頭全ての子でブリーダーが里親募集していたようです。ブリーダーの割合の多さも気になる点ではありますが、里親募集していた子に限られているというのもアニフェアの保護犬の特徴と言えると思います。
(この説明文を鵜呑みにすれば、ブリーダーが里親募集をしていない子(何らかの事情で里親募集ができない子)は含まれていないということになります)
雌(メス)の割合が8割=繁殖引退犬?

オスとメスの割合は、オスが24頭、メスが80頭であり、メスが8割近くを占める結果。加えて、年齢別を見てみれば4歳以降が77頭です。さらに、避妊・去勢の有無を見れば94頭が避妊・去勢されていませんでした。

前述のブリーダーから保護した犬ばかりの実態を鑑み考えてみると繁殖引退犬で大多数が占められており、なおかつアニフェアでは避妊・去勢せずに里親募集をかけているということになります。

トライアルがない
アニフェアではトライアルを行わない理由として以下の4つを挙げられています。
- 犬が「飼い主から離れる」ことを減らすため
- 環境の変化によるストレスで体に負担がかかるのを防ぐため
- 新しい人に出会うストレスで体に負担がかかるのを防ぐため
- 安易な引き取りを防ぐため
トライアルは保護団体によって行っていたりしなかったりします。アニフェアでは上記の理由でトライアルは行っていないそうです。
しかし、トライアルの意義としては、犬と家族との相性、先住犬、先住猫との相性、保護犬の問題行動の有無や健康状態の確認、家族にアレルギーが出てしまうなど不測の事態がないかなどの確認の意味があります。保護犬との初対面で好印象を持ったとしても家族の合意がきちんと取れていないケースや住環境によっては保護犬が慣れて生活するには難しいケースもありえます。特に初めて飼育するご家庭ではトライアルを行い柔軟に対応できることは大事なことだと思います。
保護団体側としてはトライアル期間中のトラブル、怪我や逸走、ストレスで体調を崩すなどトライアル後に戻されることを考えるとやりたくないのかもしれません。保護団体・保護動物・飼い主のそれぞれの立場があるので簡単な話ではないのかもしれませんが、飼い主の立場を考えるとトライアルするにしろしないにしろ、トライアルがあれば選択肢が広がり安心してお迎えを考えられると思います。
保護犬と対面せずに譲渡手続きが可能
アニフェアのホームページやインスタグラムでの掲載の他、LINEでも保護犬の紹介があります。保護犬の写真や動画を確認して気に入ったら、里親審査を受け、審査に合格したらオンラインで譲渡契約、支払いが可能です。実際に保護犬に会ってから決めることも可能ですが、この場合は他に希望される飼い主の方がいた場合は先に決まってしまう場合があります。(支払いをせずに待つ場合は仮契約の状態)
このため気に入った子がいた場合、即決でお迎えを決定される方もいらっしゃいます。
すぐに決めることができるのは飼い主にとっては利点でもあるかもしれませんが、動物と対面する前に契約して譲渡の流れを考えると以前に規制された動物のネット販売を思い起こされる方もおられると思います。動物のネット販売が規制されるようになった経緯として、購入者からの様々なトラブルが国民生活センターに寄せられたことがありました。
規制の理由としては、衝動的な購入、現物確認の必要性(健康状態や性格の把握)、飼育に関する知識不足(不適切な飼育が起こりやすい)などがありました。他にも動物虐待を助長するなどの意見もあり動物のネット販売の規制にいたりました。
譲渡の場合は販売ではないため規制されていないのかもしれませんが、動物のことをよく理解してから飼う重要性に変わりありません。
高額なお迎え費用(譲渡費用)
お迎え費用については、公式HPに記載があります。抜粋すると以下の通りです。
費目 | 費用 |
---|---|
お迎えセット | 17,615円~ |
ペット保険 | 33,040円/年~ |
リコンディショニングパック | 施術内容によって費用が異なる |
寄付金 | 詳しくは問い合わせ |
リコンディショニングパックは、シェルターでお迎えの場合に必要な費用とされています。ただし、基本的にはシェルターで保護されていることを考えると実質必須だと思われます。費用については里親の方がSNS等で公表されているものを調べると、33,000円~41,000円程度でした。
また、寄付金については任意とされていますが、里親の方のブログを拝見したところ必須とされている方もおりました。あくまでも任意なのかもしれませんが多くの方が寄付金を支払われているのが実態なのかもしれません。(活動支援金と称して数万円~十数万円の協力の依頼をされるようです)
さらに、上記以外では半年間のドッグフード定期購入が必須となります。フードの種類はいくつかあるようですが、6,000~8,000円/月くらいになるようです。
これらを踏まえてお迎え費用の総額は、100,000円程度のものから300,000円弱かかるものがあるようです。
お迎え費用が高額かそうでないかは人それぞれかもしれませんが、保護犬の譲渡ということを考えるとかなり高額な部類に入るのではないでしょうか。ペットショップに展示されている犬の価格を見ればほとんど変わらない費用のケースもあるのが分かると思います。
誠実とは言えない利用規約(免責条項)
アニフェアの公式HPの利用規約には以下のような文言があります。
免責条項当サイトに掲載している犬および猫たちの情報は、掲載希望者の自己申告に基づき掲載されているものであり、掲載時点から将来にわたり、当サイトがその情報の信頼性を保証するものではありません。 また、当サイトへのアクセスにより生じたコンピューターその他機器への損害やウイルス感染についていかなる責任も負いません。
『当サイトがその情報の信頼性を保証するものではありません』この文面を額面通りに受け取れば、掲載されている保護犬の情報は間違っていても知りません、責任は取りません、ということになります。
仮に年齢や体重に誤りがあろうが、健康面で問題なしと掲載されていた子が病気であったとしても責任は負いませんということになります。
里親になられる飼い主には正しい情報を提示するのが本来あるべき姿だと思います。もし、掲載希望者が提供した情報に疑義がある場合、確認した上で正しい情報を掲載するのが筋でしょう。保護犬の掲載情報に誤りがあればお迎えを考える飼い主の判断を誤らせることに繋がります。保護犬をこれから飼育していく上で重要な情報ですのでこの部分の信頼性を保証できないとするのはいかがなものでしょうか。飼い主にも保護犬に対しても責任のあるものではないと思います。
以上になります。アニフェアについては様々な話を耳にしますが、実際に調べてみた内容では上記の通りでした。保護犬ビジネスであると指摘される方もおられるようですが、客観的に見て自分がどう思うかで判断されるのもいいと思いました。