2019動物愛護法改正案出揃う。ペット業界マイナス獣医師プラス

 2019年の動物愛護法改正案の概要が整い、ニュースに取り上げられています。

主な改正案は、

  • 8週齢規制。生後56日以下の犬猫の販売禁止
  • マイクロチップの装着義務化。業者へ義務付け
  • 業者の飼育環境改善。飼育施設の広さ、構造、従業員1人あたりの上限飼育数の数値規制
  • 動物虐待の厳罰化

この辺りが発表されている部分です。

8週齢規制については、現行法でも本則ではすでに同様の規制がかけられています。
しかし、附則付きのもので前回2012年の改正では、

施行後3年間は、45日
4年以降は、49日(7週齢)

となっており、現状、7週齢で販売されているのが実情でした。

マイクロチップの装着義務化については、災害時の動物救護、迷子の犬猫の保護などに役立てられます。
また、販売業者の情報や飼い主の情報、犬猫の年齢、病歴などを記録することで、犬猫の身分証明になります。

業者の飼育環境改善も現行の法律では取り締まりが難しい面があったため、数値化してより判断のしやすいものとなりました。飼育環境の改善にはとても良い改正案ではないでしょうか。

動物虐待の厳罰化は、
現行法の「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」から
「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」または「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」
で調整を進められているそうです。

と、概要はここまでです。以下もご興味がありましたらお付き合いください。

▼目次

  1. ペット業界にはマイナスの今回の改正案
  2. 獣医師(チップ製造業者)にはプラスの今回の改正案
  3. 8週齢規制でも短くない?犬猫どっちも一緒くたにしているのもヘン!?
  4. マイクロチップ装着義務化を一部の動物愛護団体が反対している
  5. 芸能人って動物虐待の厳罰化ばかり言っていません?

ペット業界にはマイナスの今回の改正案

前回2012年の法改正の時点でも、8週齢規制を強固に反対していたペット業界。
この8週齢規制に反対してきた理由としては、

  • 手元に置いておく期間が延びる分の飼育コスト増
  • 大きくなると売れにくい=卸価格の下落

があげられます。
よちよち歩きの丸っこい可愛らしさは、つい家に連れて帰りたくなるような気持ちにさせられるし、実際にペットショップで売れる犬猫は、生後2~3ヵ月のものがほとんどです。半年以上経つと多くが売れずに残ります。

繁殖業者からすれば、飼育コストがかかる分、なるべく早く手放したいし、
ペットショップも早く展示して、売れ時となる期間に長く客の目につかせるようにしたい。

このような思惑があってのことですが、諸外国の多くが8週齢規制を設けていたり、8週以前に親兄弟と離してしまうと問題行動が多くみられる研究結果から今回の法改正に至りました。

また、マイクロチップの装着の義務化もペットショップで販売される犬猫が対象となります。
こちらは、販売時点でマイクロチップが装着されているわけですから費用負担は繁殖業者かペットショップの費用負担になります。
ただし、この費用負担に関しては、価格に転嫁することもできますので、一概にコスト増とも言えません。

そして、業者の飼育環境改善。
飼育施設の広さや構造の規定や従業員一人あたりの飼育数に上限を設けるとしています。
これまで犬猫を過密な環境下で飼育をされている業者が少なからずありました。

一昨年、福井県内の動物販売業者は、犬猫385匹に対し、狭いケージや過密な環境下で飼育、繁殖を行っており、動物虐待などの容疑で書類送検される事件が起こりました。

福井新聞「「子犬工場」業者と飼育員書類送検
2018.5.19 福井新聞

結果、不起訴処分となるわけですが、その他の問題でも立件ができずに終わる現状がありました。

こういった劣悪な環境下での飼育、繁殖の改善のための法改正ではありますが、十分な飼育施設、従業員数を持たない業者にとっては痛手であると言えます。

獣医師(チップ製造業者)にはプラスの今回の改正案

プラス、というと少し語弊があるかもしれません。
しかし、マイクロチップ義務化により、獣医師やチップ製造業者の仕事は増えるだろうし、新たな利権を得ることは確かでしょう。

また、装置の他に、情報を管理する仕組み(システム)も必要になってきますので、個体情報の管理システムの開発・維持にも大きなお金が動くことは事実であると思います。

ちなみに、マイクロチップの義務化を進めてきたのは、
「自民党動物愛護管理推進議員連盟」
鴨下一郎氏、山本幸三氏、山際大志郎氏、三原じゅん子氏 などが名を連ねています。

8週齢規制でも短くない?犬猫どっちも一緒くたにしているのもヘン!?

そもそも、8週齢規制することが正しいことのように話が進められているのですが、8週齢(56日)以降に販売をすること自体、早いように思ってしまいます。

8週齢というと人間の年齢に当てはめると、3歳 です。

3歳になったらすぐ売りに出されるというのもずいぶん性急なことだと思うんです。

この8週という期間の根拠の大枠は、犬猫の社会化期を元にしています。

犬の場合、生後約3週~16週齢
猫の場合、生後約2週~9週齢

と言われていて、この時期に母親や兄弟と一緒に生活を営むことで社会性が育まれるというものです。
社会化期を考慮するものであるなら、犬は少し早すぎると思いますし、犬猫で同じ期間に設定されるのもおかしいと思ってしまうわけです。

犬猫の事を思うなら、本来はもう少し成長を待ってから販売を行うべきなのでしょうけど、人が商売として行っていることなので仕方がないということなのでしょうか。

マイクロチップ装着義務化を一部の動物愛護団体が反対している

動物愛護団体によるマイクロチップの装着義務化については、別記事にまとめてあります。

マイクロチップの装着義務化は、今回の改正案では、業者が販売する犬猫に対してです。
また、8週齢規制も設けられることになりましたが、マイクロチップの装着義務化をセットで行うことで、不正を行う業者への抑止力にもなります。
マイクロチップに業者、犬猫の生年月日を記録することで、8週齢規制を守らない業者の問題を発覚しやすくします。

他にも災害時の救護活動や迷子の犬猫の保護に役立てる面もありますが、ブリーダーや繁殖業者による乱繁殖を防ぐ一手にもなると思います。

それで、一部の動物愛護団体が反対をしているわけですが、その内容を見ていると、そんな理由で?と訝しげてしまうような理由。

「法律や条令等で「義務付け」とすることには大きな問題があります。それは野良猫の命を脅かすことになるからです。」

こんなことを言っていたりするのですが、
チップが義務化されたら飼い猫と野良猫の判断がしやすくなるので殺処分されやすくなる。という理論です。

管理人の推測ですが、これは表向きの理由であって、自分達の負担や活動がしにくくなるのを懸念しての反対だと思います。

この義務化が業者に対してだけじゃなく、全てのペットに義務付けられることになったら、動物愛護団体で保護している犬猫にもマイクロチップの装着が必要になります。
この費用は、団体の活動費用を圧迫することでしょう。

また、犬猫を保護したとして、マイクロチップを装着していたら?
マイクロチップの登録情報を確認して、飼い主がいれば飼い主に連絡を取り、連絡が取れなければ、さらに販売業者などに遡って飼い主を探すなどの作業が必要になってきます。
加えて、飼い主が遺棄をしていたと判明した場合、動物虐待として通報を行う必要もあるかもしれません。
これまでのようにただ保護をして、譲渡先を見つける。というわけにはいかなくなります。
この労力は、活動の足を引っ張り兼ねないかもしれません。

これらを懸念しての反対なのでは?という深読みをしたくなるような反対内容なのです。

芸能人って動物虐待の厳罰化ばかり言っていません?

特に誰・・・とは言いませんが。

動物愛護に熱心であるならば、動物虐待の厳罰化より8週齢規制を強く意見するべきだし、業者への飼育環境改善を訴えるべきだと思います。
もっと言えば、ペットショップの生体販売を反対するべきではないでしょうか?

しかし、生体販売に反対だったり、8週齢規制に熱心であるとすると、ペット業界とは利害が一致しません。

もし、動物愛護に熱心な芸能人が参院選などに出馬するような事があれば、その方の発言の偏りと関係者の見直しをしてみると本当の意図が分かってくるかもしれません。


以上になります。
ペットショップというと子供のころは、犬や猫などの世話をしたり飼い主に引き合わせてあげて喜んでもらう、動物好きな方が就く職業だと思っていました。
でも、よくよく考えてみると、
犬猫を見世物のように売る方法を取っている時点で、本当に動物好きなじゃないよなって思いました。やっぱり商売、お金のための仕事だな・・・と思うわけです。

スポンサーリンク

こちらの記事も読まれています。

のらねこらむプロフィール

authorImage

のらねこらむ管理人

2017年4月に新居へ引っ越した直後から野良猫に悩まされる。
日々、野良猫との領地争いを繰り広げています。

対策グッズのほとんどは、実際に買って・試した結果をまとめたものです。
当サイトの情報が皆様の野良猫対策の助けになれば幸いです。
詳しいプロフィールは、こちら

新着記事