犬猫の里親募集サイトの医療費等の経費が高い?経費の妥当性考察

 犬や猫を飼われる方の中には里親募集サイト経由で引き取りをされる方もいらっしゃると思います。昔は今ほどマッチングサイトも少なかったためペットを探す方法としては一部の人の利用に限られていたかと思いますが、今では広く知られるようになりました。

さて、里親募集サイトで犬や猫の引き取りをすると多くのケースで費用が発生します。金額も数千円から数万円、高いと十万円を超えることがあるくらいです。近所の人から譲ってもらったり引き取ったりして飼われた経験がある方には費用がかかるにしても数万円となると額に首をかしげたくなるかもしれません。

もちろん、譲渡の主旨を理解され動物愛護団体の保護活動に賛同されていたりであれば納得の上ではありますが、入手経路の一つとして検討される方の中には譲渡なのに『何でそんなにお金がかかるんだろう?』と思ってしまうのもありえると思います。

本記事では、犬猫の里親募集サイトの譲渡費用について経費の妥当性考察を考察いたしました。

▼目次

  1. 経費にはどんなものが含まれるか?
  2. 里親募集サイトが定義している経費の内容
  3. 実際に里親募集サイトで募集されている経費の金額
  4. 譲渡費用の相場と妥当な価格帯について
  5. 里親募集の際に経費や寄付金などを受け取るのは法律的に問題ないのか?
  6. 譲渡金額に疑問を感じた場合に確認すると良い事

経費にはどんなものが含まれるか?

掲載者が提示されている経費にはどのようなものが含まれるでしょうか。実際に里親募集サイトで内容を確認してみると以下のような項目がありました。

  • 健康診断
  • 検便
  • ワクチン接種
  • 狂犬病予防注射
  • ウィルス検査
  • 駆虫
  • ノミ取り
  • 不妊去勢手術
  • 医療費(猫風邪、点滴、抗生剤等)
  • 畜犬登録料
  • マイクロチップ装着・登録料
  • 飼育管理費
  • 保護時の交通費
  • 事務手数料
  • 寄付金(または賛助会員費)

上記の他、受け渡し場所によっては車での移動になるため、ガソリン代・高速道路料金・駐車場代などの交通費を実費として請求される場合もあります。

また、細かく分けておらず単に医療費や譲渡費用、諸経費と記載されているものもありました。この場合は掲載者にコンタクトを取ってから詳しく説明があると思われます。

かなり細かい費用まで含めていたり、大雑把であったり掲載者によって様々といった状況でした。加えて、細かい費用を積み重ねれば実費と言えどそれなりの金額になることもありえます。

里親募集サイトが定義している経費の内容

掲載数の多い里親募集サイトの以下について規約を確認してみます。

  • ペットのおうち
  • ハグー
  • いつでも里親募集中

ペットのおうちの費用に関する譲渡ルール

一般会員と保護活動者で費用請求のルールが異なります。

一般会員は、譲渡時の費用請求は不可。ただし、交通費(実費)については、双方事前の合意に基づき請求が可能。

保護活動者は、譲渡時の費用請求ができます。ただし、以下の場合は保護活動者であっても譲渡費用の請求は禁止とされています。

以下、ペットのおうちの会員種別と譲渡費用に関するルール引用
->ペットのおうち(https://www.pet-home.jp/)里親募集ガイドより

生体販売・繁殖事業者から保護したペットの里親募集を行う際に、該当事業者の動物取扱業登録情報(登録番号、氏名または名称、所在地)を明記しない場合
行政機関(警察、保健所等)経由で保護したペットの里親募集を行う際に、担当行政機関の名称(〇〇警察署、〇〇保健所等)を明記しない場合
※担当行政機関からの指導により名称を非公開とする場合を除く
他の保護活動者からの引き受けなどの場合で、保護経緯が不明な保護ペットの里親募集
保護ではなく、自身や家族の事情によりやむを得ず飼育困難となったペットの里親募集
保護ではなく、自身や家族の飼育(世話)しているペットが産んだ子供を飼育できないことによる里親募集

また、以下の費用は請求できません。
募集情報内に記載の無い費用
金額を確定しない寄付金

ハグーの費用に関する譲渡ルール

一般会員と保護活動者で費用請求のルールが異なります。

一般会員は、正式譲渡の際にかかる交通費(実費)のみ請求が可能。

保護活動者は、譲渡時の費用請求が可能。ペットの譲渡に関わる費用・寄付金を請求することができます。ただし、募集情報内に記載の無い費用の記載が確認できます。

費用・寄付金については「里親募集情報内に掲載され、金額が確定しているもの(※交通費を除く)」に限り、授受が可能です。

さらに、ハグーでは費用例も提示されています。
以下、ハグー(https://hug-u.pet/)の里親募集詳細ページのhugUからのお願い引用

hugU(ハグーの費用例)
畜犬登録:3,000円
狂犬病予防注射:3,500円
駆虫:3,500円~
健康診断:3,500円~
ワクチン接種:5,000円~
避妊去勢:20,000円~
マイクロチップ:3,000円~
マイクロチップ登録料:1,050円
ペット保険(任意):月々2,200円~

いつでも里親募集中の費用に関する譲渡ルール

掲載者の同意事項として以下が提示されています。
以下、いつでも里親募集中(https://satoya-boshu.net/)里親募集の方法より引用。
※費用に関する部分のみピックアップして引用しています。

・営利目的の利用ではありません。
・営利目的の利用に加担しません。
・医療費・食費・消耗品代・その他、適正な飼育に必要な費用の一部または全額を申し受ける場合は、なるべく領収書などの明細がわかるものを提示します。
・譲渡に関わる費用について確認と話し合いをします。

上記の通り費用請求に関して何がダメということは指定していないようです。
里親募集情報内に掲載し、里親応募者と事前合意していれば問題ないとしている内容でした。

実際に里親募集サイトで募集されている経費の金額

掲載数の多い里親募集サイトで犬と猫を100頭ずつサンプルを取りました。項目ごとの平均額が以下になります。

※2025年1月27日時点の掲載順でサンプルを取っています。サンプルを取得したサイトは前述した譲渡ルールを確認したサイトのうちの一つです。

犬の経費としてあげられているもの

費目 費用(平均)
譲渡費用 42,925円
医療費 29,680円
狂犬病予防 3,700円
畜犬登録 3,000円
血液検査 7,162円
ノミダニ予防 1,000円
不妊去勢手術費 26,666円
飼育管理費 5,666円
マイクロチップ 4,000円
搬送費 7,500円
寄付金 18,000円
初診料 1,100円
事務手数料 1,000円
諸経費 10,000円
エアタグ 4,000円

猫の経費としてあげられているもの

費目 費用(平均)
譲渡費用 37,285円
医療費 20,332円
ウィルス検査 4,726円
ワクチン 5,217円
蚤取り、駆虫 2,681円
駆虫 1,500円
検便 2,850円
抗生物質 2,750円
補液皮下点滴 2,333円
不妊去勢手術費 9,807円
飼育管理費 4,500円
マイクロチップ 2,400円
搬送費 5,000円
寄付金 8,333円
譲渡金 3,000円
お申し込み費 1,000円

費目は掲載者が自由に決められるため、ひとまとめに「譲渡費用」「医療費」とされているケースが多く見受けられました。
この他、費目を事細かに分けられている掲載者もおりましたが、本当にかかった費用をそのまんま請求していそうなケースもあります。

費目別に見てみると「不妊去勢手術費用」は、雌雄で金額が異なると思います(メスの方が高い)。にも関わらず雌雄どちらも同額とされている保護団体の掲載者もおりました。加えて、自治体によっては助成金を受けられる場合もあるため本当に実費を請求されているのか疑問に感じる方もおられるでしょう。

「飼育管理費」については、名前をミルク代やご飯代、養育費などとする掲載者もおりましたが便宜上飼育管理費とさせていただきました。餌代が主な費用ということだと思いますがこちらもどうでしょう。保護した犬猫であれば掲載者の善意で行われていることだと思うのですがそれを里親を希望される方に負担させるのは本当に妥当なことなのでしょうか?どこか腑に落ちない気がします。

「寄付金」は平均すると、犬が18,000円、猫が8,333円でした。サイトに掲載されている以上、里親になる場合は支払う必要のある金額だと思います。とはいえ寄付は強制されるべきものではないと思います。しかし、同意の上であればよしとされているということでしょう。

さらに一部の掲載者に限ったものだと「エアタグ」「事務手数料」「お申し込み費」「譲渡金」といった費目もありました。エアタグは掲載者が勝手につけたのでは?と首をかしげたくなりますし、事務手数料やお申込み費、譲渡金は掲載者の塩梅で何とでも取れる費用になってしまうような気がします。

他にも気になることと言えば費用の額面。6,600円、5,500円、3,300円といった金額もありました。穿った見方になってしまいますが、まさか消費税まで請求されているのでは・・・?と勘繰りたくなるくらいです。

譲渡費用の相場と妥当な価格帯について

譲渡費用の相場については、前回まとめた記事に詳しく記載しています。

上記の記事では、譲渡費用の平均額、中央値の金額などをまとめました。抜粋すると以下の通りです。

平均 中央値 最安値 最高値
オス 40,170円 40,000円 3,000円 169,000円
メス 41,196円 40,000円 3,000円 110,000円
合計 40,673円 40,000円 3,000円 169,000円

平均 中央値 最安値 最高値
オス 31,850円 31,000円 3,520円 86,010円
メス 32,184円 35,000円 2,500円 72,000円
合計 32,020円 31,000円 2,500円 86,010円

譲渡費用としては犬が40,000円、猫が32,000円程度が平均額でした。ただし一番多い価格帯で言えば犬猫どちらも40,000円台に集中していました。このため譲渡費用としては、40,000円程度が現時点の相場になると思われます。

また、譲渡費用の多くを占める医療費については、その動物の状態や地域差、自治体の助成金や補助金を利用したのかなどケースバイケースになるため妥当な価格帯はあってないようなものだと思います。例えば不妊去勢手術の費用は、10,000~30,000円程度が一般的な価格だと思いますが、麻酔の使用や入院の有無、術後の経過観察や投薬が必要であれば費用はかさみます。この辺りの費用に関しては掲載者に確認の上、領収書などで明細を明らかにしていただくのがいいのだと思います。

里親募集の際に経費や寄付金などを受け取るのは法律的に問題ないのか?

犬や猫を含むペットの生体販売は「第一種動物取扱業」の登録が必要です。都道府県への登録が義務付けられています。しかし、里親募集では生体販売ではなくあくまで譲渡の際に実費などの経費を請求しています。このため生体販売ではないとしています。

では、第一種動物取扱業とはどういった生業かを考えてみると端的に表せば、

営利を目的として動物を取り扱うこと

ということになります。

他にも有償・無償は関係ない、反復継続して行っている、などの条件もありますが要約すると上記のようなところ。

それから営利目的とは、利益を得ることを目的にした活動のことです。

これらを勘案するに、ワクチン代や交通費、保護活動代の寄付を得ることは、実際にかかった医療費や飼育費や交通費、保護活動に充てられる寄付の扱いであれば、問題なし。
実際にかかった以上の経費を要求したり譲渡と関係ない経費が含まれていたり手数料のような形で金銭を受け取ると、問題有りだと思われます。

ただし、お礼の手土産を受け取っていたり保護した時点で不妊去勢手術済みなのにその費用を要求していたらどうでしょうか。この場合は営利性があると見なされる可能性もゼロではないと思われます。

また、「反復継続」して(不特定多数の相手に対して年間2回以上または2頭以上)譲渡や取引を行っていた場合、実費のような経費扱いでも営利性があると判断される可能性もゼロではないのかもしれません。

とはいえ法律に関しては、事案の1件1件で事情が異なる為、全て同じ結果になることはないとは思います。

ただ、大まかに見るとこのように分けて考えることができ、里親募集のサイトなどで金銭を要求しているものは経費扱いとして考えているため営利目的ではないというところでしょうか。

譲渡金額に疑問を感じた場合に確認すると良い事

譲渡金額は、掲載者が経費としてかかった費目を自由に設定できるため金額にかなりのばらつきがあるのは前述の通りです。もし、譲渡金額に疑問を感じたなら事前に詳細を教えていただけるように依頼しましょう。

医療費

医療費であれば動物病院が発行した領収書があるはずです。里親募集サイトによっては費用を証明できるものの提示が条件に含まれていたりしますので領収書を見せてもらうのがいいと思います。

不妊去勢手術費

領収書を確認しましょう。領収書がない場合でもいつ手術されたのかを聞いてみるのがいいと思います。里親募集サイトによっては医療費の請求は遡って1年以内とされていたりもします。
(それに、掲載者の都合で手放すことになってもこれまでかかったワクチンや不妊去勢手術代を里親に請求するのっておかしな話でしょう?)

飼育費

飼育費は、フードやペットシーツなどの内訳を聞くよりもいつから飼育(または保護)されているのか聞いてみた方が良さそうです(飼育期間で費用は大きく変わる)。加えて、動物の身なりがしっかりされているようであればシャンプーやトリミングなどのケアもされていると思います。また、保護犬や保護猫の場合、歯や耳、手足や爪の状態が悪い子も多いです。この辺りもケアをされていればお世話にお金と時間をかけられているのがわかります。

寄付金

寄付金は、掲載者の活動に賛同できない場合は払いたくないかもしれませんが寄付金の支払いが必須であれば交渉も難しいでしょう。また、里親募集サイトによっては寄付金の上限が決められていたりもしますのでルールの確認も大事です。

交渉の余地は多少はあるかもしれませんが基本的には掲載者の条件で譲渡を行うことになるため、納得がいかない場合は諦めるのがいいのだと思います。(明らかなルール違反などあればサイト運営者に通報という手段も)


以上になります。里親募集のサイトを見ると日々かなりの数の動物達の掲載があります。中には里親ビジネスと揶揄されるようなグレーな掲載者もいる話も耳にします。疑問点や不明点などは確認をしながら取引を進めるのがいいのかもしれません。