尾の短い猫、尾の丸まった猫、尾の曲がった猫、しっぽに特長のある野良猫がちらほら見かけることってありますよね。もちろん長いしっぽの野良猫も多く、管理人の近所の野良猫達の多くは長いしっぽです。2割くらいが短いしっぽを持っていますね。
短いしっぽ、丸いしっぽ、このような違いはどこから来るのでしょうか?そのルーツは、日本の歴史とその時代の文化も関わりがあるようです。
日本にいつ猫はやってきたか
いつ頃、猫が日本に渡来してきたか?というと諸説あるようです。
古い書物や歴史書に猫が登場するのは約1200年前の平安時代。この頃には猫は書物に登場するくらい認知されていたということでしょう。
また、古墳や遺跡から足跡や骨などの発掘から約1400年前の飛鳥時代。紀元前の弥生時代の遺跡などから猫と思われる骨が発見されたという話もあります。
しかし、日本に残されている最も古い書物の「古事記」や同じ奈良時代の「日本書紀」には記述はありません。民衆の間に広まったのはもう少し後の時代と考えても良さそうですね。
日本にどうやって猫はやってきたか
平安時代には、遣隋使、遣唐使を中国に派遣して交流が行われ、漢字や宗教などの文化面や律令制度など政策面の影響がとても大きかった時代。
貿易のため海を行き来する船に揺られて、猫が日本に渡ってきたと言われています。
なぜ船に猫が?というと、貿易船の船内には食料や積み荷をたくさん積んでいましたが、それを食い荒らすネズミの存在は船乗りにとって天敵であり、ネズミを退治するため猫が乗船していたというわけです。
当時の猫は船の守り神だったんですね。
短い尻尾の猫のルーツ
平安時代、鎌倉時代と東アジアで行われていた貿易は、16世紀の大航海時代の幕開けからヨーロッパとの貿易=南蛮貿易が始まります。
当時室町時代の日本では戦国時代と呼ばれ、戦国大名がいくつもの勢力に分かれて覇権を競っていた時代。16世紀半ばに西洋人が来航し、西洋人との交易が富をもたらし覇権争いに大きく影響を及ぼしました。戦国大名の多くは勝ち抜いていくために積極的に対外交易を行います。
その頃に来航していた南蛮船にネズミ捕りのため乗せられていたのが「短い尻尾の猫」だったと言われています。
ヨーロッパから来航する南蛮船は、途中、東南アジアのマラッカを経由し、東アジアに足を延ばしますが、このマラッカにいた猫が「短い尻尾」だったようです。
当時のマラッカは、ヨーロッパ – インド – 東南アジア – 東アジア を結ぶ中で、アジアの中継拠点と言える最重要拠点でした。(フランシスコ・ザビエルも東南アジアの宣教の拠点をマラッカにしていました)
このことからも南蛮船の多くはマラッカを経由して東アジアに足を延ばしていたと考えられ、マラッカで調達されたネズミ捕り用の猫が「短い尻尾」であったのは間違いではなさそうです。
江戸時代に入ると鎖国の時代
日本は江戸時代に入ると鎖国に入りますが、貿易の全てをストップしていたわけではなく、幕府が貿易と出入国を管理していたのが鎖国の時代です。南蛮船と貿易を行っていたのは長崎・出島で、外国から渡ってくる猫達の多くは長崎・出島であったと言えます。
管理人は、長崎には行ったことがないのですが、今でも長崎にいる猫の多くは「短い尻尾」の猫だそうです。
日本人の迷信「猫又」から尾の長い猫が嫌われる
江戸時代中期になると「しっぽの長い猫は、老いると尾が二股になり妖怪(猫又)になる」という猫又伝説が流行します。
そのため、しっぽの短い猫が好まれるようになり、長崎から日本全国に広がっていったと考えられています。
長い尻尾の猫は断尾させられるということもあったそうですが、猫からしたらたまったものではなかったでしょうね。
またこれも江戸時代の話ですが、猫の鍵状の尻尾が蔵の鍵に似てることから財産が貯まると縁起が良く、カギしっぽのネコも珍重されていたそうです。
鎖国が終わり外来種の猫種が多く輸入される
鎖国後は、他の猫が輸入され、戦後で言えばシャム猫やアメリカンショートヘアーが流行り、外来種の猫も多く飼われるようになりました。そして、当時は放し飼いが当たり前、去勢、不妊などもなかった時代なので、純血の日本猫と外来種の猫との雑種化が進み、結果的に尾の長い猫が増えていったという時代の流れ。
ただ、こうした外来種の猫との雑種化で、純血の日本猫がほとんどいなくなってしまうのは、ちょっと寂しさがありますね。
尻尾のない「マンクス」日本猫の「ジャパニーズボブテイル」
マンクスは、イギリスのマン島を発祥とする尻尾の無い猫の品種。突然変異で発生した尻尾の無い猫が固定種として定着したもの。
ジャパニーズボブテイルは、鎖国後の日本に来た外国人が尻尾に特長のある日本猫をとても珍しがり、アメリカに日本猫を持ち帰って独自に交配させて作った血統種を言います。
以上になります。時代の流れや伝承、迷信、その時々の文化や生活様式。様々なものがあっての今の猫達の姿。ということを考えると奥深くて興味深いと思いました。