「動物愛護推進員」
言葉自体は見聞きしたことがありますが、どんな活動をされているか具体的には知らない方が多いと思います。
管理人も保健所の職員の方に「推進委員の方は近く(私の住んでいる地域)におりませんか?」と尋ねたことがあります。(野良猫の件でしばしば相談をしていた会話の中で)答えは「いない」とのことで、「なられてはいかがか?」とも勧められましたが、その節は丁重にお断りしました。
しかし、動物愛護活動をされているのはなんとなくわかるのですが、具体的な活動内容はわからないものです。
環境省の資料「動物愛護推進員を養成するための教材マニュアル(案)」は目を通しましたが、本当に長い。(57ページ)言わんとしていることはわかるのですが、遠回しというかわかりづらいというか・・・。
そんなわけで、ざっくばらんに動物愛護推進員とは?をまとめてみました。
※詳しく内容を確認したい場合は「動物愛護推進員を養成するための教材マニュアル(案)」の本文をお読みになられることをおすすめいたします。
▼目次
- 動物愛護推進員とは
- 推進員の活動内容は、動物愛護管理法に規定されている
- 具体的に何をしているのか
- 推進員とただの犬猫ボランティアとの違い
- 動物愛護推協議会の役割
- 報酬など賃金は発生するか?
- 推進員に資格は必要か
- 推進員になる方法
動物愛護推進員とは
東京都福祉保健局の「動物愛護推進員について」に以下の説明があります。
動物愛護推進員とは
『動物愛護推進員は、動物への理解と知識の普及のため、地域の身近な相談員として、住民の相談に応じたり、求めに応じて飼い方の助言をするなど動物の愛護と適正飼養の普及啓発等の活動を行う方です。』
出展元:東京都福祉保健局「動物愛護推進員について」より抜粋http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/kankyo/aigo/suishinin/suishinin.html
これだけだと、まあ・・そうだよね。
- 動物愛護の普及啓発
- 地域住民の相談、助言役
これらが活動の柱ということ。
また、大事なことはあくまで「ボランティア」としての活動ということです。自主的に動物愛護活動をしていただける方を推進員として自治体が委嘱して行う活動。
動物愛護推進員は、自治体から委嘱されて活動を行いますが、公務員に準ずるような職務資格は有しないので、立入り・監視指導や措置命令などの権限はありません。
あくまで動物愛護の普及を図るボランティアという立ち位置です。多頭飼育崩壊のお宅や動物虐待が疑われるお宅の立ち入りや悪徳ペットショップの摘発を行うような権限はありません。
推進員の活動内容は、動物愛護管理法に規定されている
動物の愛護及び管理に関する法律
第三十八条 都道府県知事等は、地域における犬、猫等の動物の愛護の推進に熱意と識見を有する者のうちから、動物愛護推進員を委嘱することができる。2 動物愛護推進員は、次に掲げる活動を行う。一 犬、猫等の動物の愛護と適正な飼養の重要性について住民の理解を深めること。二 住民に対し、その求めに応じて、犬、猫等の動物がみだりに繁殖することを防止するための生殖を不能にする手術その他の措置に関する必要な助言をすること。三 犬、猫等の動物の所有者等に対し、その求めに応じて、これらの動物に適正な飼養を受ける機会を与えるために譲渡のあつせんその他の必要な支援をすること。四 犬、猫等の動物の愛護と適正な飼養の推進のために国又は都道府県等が行う施策に必要な協力をすること。五 災害時において、国又は都道府県等が行う犬、猫等の動物の避難、保護等に関する施策に必要な協力をすること。
出展元:動物の愛護及び管理に関する法律より抜粋https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=348AC1000000105
一は、飼育方法について普及啓発を行ったり、住民の相談を受けて助言や支援を行うこと。二は、「その求めに応じて」なので、住民から相談があれば助言をする。ということ。三は、「その求めに応じて」なので、住民から相談があれば譲渡の支援を行う。ということ。四は、国や都道府県が行う施策や事業の協力すること(=行政の施策や事業に反することはできない)。
これでも具体的な活動内容が見えないので、実際の活動を次にまとめます。
具体的に何をしているのか
- 飼い主への適正飼養の情報提供、助言
- 糞尿被害の相談や助言
- 多頭飼育の相談や助言
- 繁殖制限(不妊去勢手術)の自治体支援、啓発活動
- 老齢犬猫の介護の相談や助言
- 地域のパトロール(虐待や遺棄、交通事故などがないか)
- 糞拾い
- 捨て猫の保護
- 犬猫の譲渡活動や譲渡会のサポート
- 動物愛護の普及啓発資料のチラシ配り
- 犬猫のしつけ方教室のサポート
- 小学校での動物の飼い方の講習会、ふれあい教室の開催
- 老人施設への訪問活動(動物介在活動)
- 動物愛護の意見交換会の開催
- 人と動物の共通感染症の情報提供、啓蒙活動
- 自治体主催の事業、講演会のサポート
- 動物愛護週間の行事・イベント参画
- 災害時の動物救護物資支援、動物同行避難訓練
個人で活動ができるもの、自治体主催の活動に携わるものなど動物愛護に関する活動の多岐にわたります。
また、糞尿被害、多頭飼育、放し飼いなど適正飼養に関する日常的な相談を地域住民から受けることもあります。
しかし、動物愛護推進員はあくまでボランティアなので、全ての活動やイベントなどに参加しているということはなく、推進員のできる範囲で携わっています。例えば、平日の仕事が忙しければ、土日のみしか活動をされていないケースもあるようです。また、推進員によってはしつけの相談にのるくらいで、講演会やしつけ教室、学校などの訪問活動には参加していない方もいるようです。
やれること、やるべきことはたくさんありますが、推進員ご自身の考えや得意分野の違い、生活の事情により携わる範囲にかなり差があるのだと思います。
さて、
推進員は自分ができる動物愛護の活動をするボランティア。
であれば、単なる個人で活動する犬猫ボランティアと変わらない気もします。主な違いがどこにあるのかを整理してみました。
推進員とただの犬猫ボランティアとの違い
※「ただの犬猫ボランティア」というと少し言い方が悪く申し訳ないのですが、推進員との違いをはっきりさせるために分かりやすく書かせていただきました。
端的にいえば、
行政の後ろ盾があるかないかの違い
とも言えるでしょう。
推進員は、都道府県から委嘱されて活動を行います。このため、個人でできる活動の他、自治体が開催する講習会・イベント、譲渡活動、不妊去勢事業への参加を依頼されることがあります。加えて、住民から自治体に犬猫の相談があった場合に相談の窓口として協力を求められるケースもあるようです。
また、活動の中、推進員個人で解決できないことは、自治体の所管の部署と連携して対応がとれます。自治体と連携して事にあたれるのは、個人で活動されている方と違い、幅広い活動ができるという点に違いがあるでしょう。
推進員によっては、獣医師会や日本動物福祉協会などの推薦で担当されるケースも多いので、行政の他、所属するコミュニティの協力も得られる思われます。
動物愛護協議会の役割
動物愛護推進員の委嘱の推進や活動に対する支援を協議する場として
「動物愛護推進協議会」
を組織している自治体がほとんどです。
協議会は、自治体、動物愛護団体、獣医師会、動物福祉協会等の公益社団法人が組織しています。(町内会、婦人会といった団体も参加可能なようですが、実態としては少ないでしょう)
具体的な役割としては、
- 推進員の推薦
- 推進員のスキルアップ支援
- 問題発生時の助言・サポート
- 自治体の講演会、イベント参加の調整や企画推進
- 活動報告会の実施
- 普及啓発資材、動物愛護に関する資料の提供
以上があります。
報酬など賃金は発生するか?
報酬なし、イベント参加の謝礼なし、講演会等交通費の実費の支払いなし
基本的に報酬等は一切発生しません。
捨て猫や病気や怪我の猫を保護する場合であっても、餌代や治療費も全て自費が基本です。
推進員に資格は必要か
法令等で必要な資格は定義されていません。
動物愛護管理法でも『犬、猫等の動物の愛護の推進に熱意と識見を有する者』とあるのみです。
しかし、実際のところ動物愛護団体、獣医師会、動物福祉協会等の推薦者が推進員になるケースが多く、単に犬猫が好きというだけでは難しいのが実情のようです。
要するに資格は必要ないが、獣医師、愛玩動物飼養管理士、訓練士、動物取扱業者、動物愛護ボランティアなど動物に関する経験や活動に必要な知識を有する必要があるというところでしょう。
推進員になる方法
- 自治体からの推薦
- 保健所からの推薦
- 動物愛護団体、獣医師会、動物福祉協会等からの推薦
- 一般の公募による募集
一般公募は、多くの自治体が年に一度、募集を行っており、
募集 → 面接 → 委嘱
の流れで推進員を選考しています。
また、推進員には動物愛護推進員の身分証を発行されます。
以上になります。推進員はあくまでボランティア。環境省の資料「動物愛護推進員を養成するための教材マニュアル(案)」でもボランティア活動の心構えと接遇に関する内容で17ページも割かれています。ボランティア活動の意義を正しく理解していないと務まらないのが推進員だと思います。