JAVA(NPO法人動物実験の廃止を求める会)は、マイクロチップ義務化を反対しています。
JAVA NPO法人動物実験の廃止を求める会
ペットの犬猫へのマイクロチップの装着の義務付けの動きは、前回の動物愛護法改正(2013年)でも議論されており、見送りとなっていた課題です。今回の動物愛護法改正(2019年)では、マイクロチップの装着を義務付ける骨子案をまとめ、義務化に向けて進んでいます。
この骨子案では、
「迷うなどして保護された犬や猫の殺処分を減らすため、飼い主を特定する」
個体識別用マイクロチップの装着の義務化を動物愛護法に盛り込もうというものです。
「保護された犬や猫の殺処分を減らすため」には一理あり
犬に比べて猫は保健所に引き取られた後、飼い主に返還された数が圧倒的に少ない。
環境省が公表されている「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」で返還数を見てみると犬は、12,286匹が飼い主など所有者に返還されていますが、猫については、316匹。
犬を飼う場合、自治体で犬の登録を行い、鑑札の交付を受ける必要があり、鑑札を犬の首輪などにつけておくことが義務付けられています。(狂犬病予防法)このため鑑札をつけている犬は、逸走などで迷子になったとしても飼い主が特定でき返還がしやすい。
一方、猫の場合はこういった義務的なものがないため、飼い猫であっても首輪を付けていなかったりすることが多い。首輪が付いていない猫を逃がしてしまうと飼い猫か迷い猫か放し飼い猫か野良猫か見分けることが困難になります。保健所で保護された場合でも飼い主を特定することは困難で、殺処分につながってしまっているのが数字からも見てとれます。
この返還に関しては、マイクロチップの装着でそれなりに改善が見込めるところだと思います。
マイクロチップを装着していると災害時の動物救護に役立つ
災害時、犬猫が置き去りにされてしまうと放浪犬・猫になってしまいます。こうした場合、動物の救護所や預り所のようなものが一時的に設けられます。その後、飼い主が引取りにくれば返還され、引取りに来ない・来れない場合でも連絡先がわかれば飼い主を特定することができます。よって、マイクロチップの装着はこのような災害時にとても効果があると考えられています。
これは、備えあれば憂いなしで、マイクロチップでなくても飼い主がわかる情報を首輪などに持たしておくことも良いでしょう。
一方、鑑札や首輪などに飼い主を特定できる情報が何もなかった場合、一時的に保護された犬猫達はどうなるでしょうか?
面倒を見る自治体の職員やボランティアの方も見ていられる期間というものは限られています。面倒を見ていられる期間が過ぎたら、その後出来る事と言えば、地域への呼びかけ、里親探し、最終的には・・・殺処分というのが現実です。
動物愛護団体がマイクロチップ義務化を反対する論点
JAVA NPO法人動物実験の廃止を求める会
いくつか問題に対してQA形式でまとめてられているので、本文から論点だけを抜粋
※Q1は、マイクロチップの説明のため割愛
Q2 チップを入れておけば、飼い犬猫が迷子になった時、見つかりやすくなるのでは?
- 保健所・警察署・動物病院の全てがマイクロチップの読み取り装置を持っているわけではない。
- 犬猫が暴れたり、マイクロチップの装着位置が分からず読み取りできない場合がある。
- マイクロチップの規格によっては読み取れない場合がある。
- チップが故障している場合がある。
- 自治体の怠慢で確認しない場合がある。
- チップに情報が登録されていないケースがある。
- チップを装着しているからと飼い主が安心して待っている間に殺処分されるかもしれない。
マイクロチップが義務化となれば、読み取り装置の配備は各所へされるものでしょう。その他は、全て憶測ですね。
Q3 犬猫を捨てたらチップによって犯人がわかるので、遺棄防止になるのでは?
- 保健所・警察署・動物病院の全てがマイクロチップの読み取り装置を持っているわけではない。
- チップの装着をきちんとする飼い主は、そもそも犬猫を捨てる確率が低いと言える。
- 無責任でどうしようもない飼い主は、義務付けをしてもチップを入れないと思われる。
- 無責任な飼い主は、チップに情報の登録や変更・更新の手続きをしなかったりすると思われる。
ほとんどが憶測ですね。それに無責任な飼い主が義務化してもチップを装着しないと考えるなら義務化してもいいですよね?
Q4 少なくとも、迷子になった時に見つかりやすいという メリットはあるのだから、飼い犬猫へのチップの装着を義務付けたらいいのでは?
「法律や条令等で「義務付け」とすることには大きな問題があります。それは野良猫の命を脅かすことになるからです。」
ここが本丸のようです。
Q5 なぜ、チップの装着を義務付けにすると野良猫の命を脅かすことになるのか?
主旨は、
「猫の苦情対応で殺処分している自治体がある。チップが義務化されたら飼い猫と野良猫の判断がしやすくなるので殺処分されやすくなる」
といったところです。
ペットの飼い主達のマイクロチップの賛否
少し別の観点から見てみましょう。ペットの飼い主達の考えです。
犬猫のマイクロチップの義務化に関して、平成23年度に環境省が一般の犬猫飼育者に対し調査をしています。一般のペットの飼い主達はどのように考えているのでしょうか。
この時の調査では、58%の飼い主達がマイクロチップに賛成しています。
また、平成22年時点で、犬:58%、猫:43% がマイクロチップを装着していました。
それから一般の犬猫飼育者の賛成と反対理由も参考になります。(以下資料抜粋)
環境省
鹿児島県奄美市では飼い猫の登録が義務化
すでに飼い猫の登録が条例で義務付けられているところもあります。(マイクロチップ装着も義務化されています)
「飼い猫の登録」
鹿児島県奄美市
鹿児島県の奄美市の条例の経緯として、ノネコによるアマミノクロウサギの捕食の問題があります。アマミノクロウサギは、名前の通り「奄美の黒うさぎ」奄美大島(と徳之島)に生息する固有種です。この固有種であり生息数の少ないアマミノクロウサギがノネコによって捕食されてしまっていることが問題となっています。ノネコの発生源とも言える飼い猫の放し飼いや野良猫の野生化の防止などを目的として、条例が制定されています。
※一般的な野良猫の生活被害の話とは異なります。条例化されている一例としてあげています。
なお、この条例は、平成23年7月20日に施行されたものです。参考までに鹿児島県の殺処分数の推移を紹介しておきます。
出典元:鹿児島県「鹿児島県動物愛護管理推進計画」
チップの義務付けで野良猫の命は危険にさらされる?
さて、マイクロチップの義務付けが行われた場合、動物愛護団体が危惧するように野良猫の命は危険にさらされるのでしょうか?
犬猫の殺処分数はかなり以前から問題になっており、全国の保健所では殺処分を減らす努力を長い期間に渡って続けてきています。以下のように環境省が公表している全国の犬・猫の殺処分数の推移を見ても殺処分数の減少は見てとれます。
出典元:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」
また、2013年の動物愛護法改正に伴い、保健所では引取りの事由次第では引取りを拒否できるようになっています。
そして、今回のマイクロチップ装着義務化も骨子案にあるように
「保護された犬や猫の殺処分を減らすため」
殺処分を減らすための義務化です。
動物愛護団体が考える
「チップが義務化されたら飼い猫と野良猫の判断がしやすくなるので殺処分されやすくなる」
行政で殺処分を減らす取り組みを進めている中、果たしてチップの義務化で殺処分が増えたりするものでしょうか?
マイクロチップの義務化で、保健所の殺処分数が増加してしまった場合、批判を受けるのは行政では・・・これも憶測になってしまうのでこのくらいにしておきます。
殺処分をなくそうと努力している最中、野良猫の命を脅かすことになる、殺処分されやすくなる。憶測を理由に義務化に反対する姿勢はどうなんでしょうか。本当に野良猫の命の危険性だけを考えての反対なのでしょうか。何か裏があるように思えてしまうのは私だけでしょうか。(管理人)