大手ペットショップのCoo&RIKU(クーアンドリク)では、CSV活動(社会貢献と事業活動の一環)として『犬猫の譲渡活動』を行っています。
活動の実績としてはこれまでに(2023年10月時点)合計7,191頭の譲渡が行われてきたようです。※活動は、2019年4月15日から全国で開始されております。
また、2023年10月度の実績でも計395頭の譲渡を行われており、里親になられる方の数も多くいらっしゃるのが分かります。譲渡の数の多さは全国展開するペットショップならではだと思いますが、ペットショップで譲渡犬猫を扱っているのも珍しく、大手ペットショップだからこそできる活動なのかもしれません。
さて、犬猫の譲渡活動と聞くと個人的には動物愛護センターや動物愛護団体で保護されている犬猫を思い浮かべますが、譲渡会などを通じて里親を希望する人を見つける形式が一般的かと思います。加えて、譲渡なのでペットショップで購入するような生体価格はかからず、費用はワクチンなどの初期医療やマイクロチップの装着、犬であれば自治体での登録費くらいだと思います。では、クーアンドリクの譲渡も同じなのかと言うと少し違います。譲渡の対象となる犬猫は店舗で見れたりホームページで写真を閲覧することができます。また、費用面に関しても一般的な譲渡とは少し違った条件や制度があったりします。
その他ネット上の情報や報道内容では、クーアンドリクの譲渡は保護犬、保護猫ではない?という話も耳にします。この話が本当だった場合、毎月数百頭の譲渡犬猫はどこから来ているのかと疑問に思ってしまいます。加えて、昨今週刊誌で告発記事が散見されるなど問題が指摘されるクーアンドリクです。譲渡活動に関しても疑問点がいくつかありました。
こちらの記事では、クーアンドリクの譲渡を通じて里親になるための条件や譲渡活動の様々な疑問をまとめました。
▼目次
- 里親になるための条件や費用
- 譲渡活動開始当初は、保護犬猫の里親募集だった?
- 現在は「保護犬・保護猫」の文言が一切出てこない
- 譲渡犬猫には、遺伝子病検査でリスクのある個体が含まれる
- 里親になる場合、健康リスクの覚悟と理解が必要
- Coo&RIKUの動物愛護団体への寄付金は、里親のお金では?
- 里親になる場合、健康リスクの覚悟と理解が必要
里親になるための条件や費用
クーアンドリクの譲渡活動は、公式HPの以下から詳しく見ることができます。-> https://www.pet-coo.com/protection/
2023年11月3日時点で、譲渡対象となっている犬の数が263頭、猫の数が285頭と多数控えているような状況でした。
また、里親になる条件などはもちろん記載はありますが、なぜかよくあるご質問のQ&A形式になっていてわかりやすくありません。以下では里親になるための条件や費用面の注意事項をまとめてみます。
諸経費の支払いが必要
タダで譲渡を受けられるわけではありません。譲渡負担金は0円としていますが、諸経費がかかります。
Fam(迷子捜索サポート登録料) | 1,320円 |
---|---|
年会費5年分 | 2,750円 |
譲渡犬猫ケアパック | 33,000円 |
総額 | 37,070円(税込) |
一番高額な譲渡犬猫ケアパックは、予防接種を何年かに渡って無料で受けられるケアサービスのようです。
この他の費用として、フード定期購入の代金とペット保険の保険料が発生します。
5年間のフード定期購入が必要
フード定期購入は、1歳以上の子は3年間、1歳未満の子は5年間の購入が必要です。
フード代金は犬猫によって異なり、またサイズによっても変わります。以下では、柴犬(小型・8kg)とマンチカン(Sサイズ)の費用を例として挙げてみます。
サイズ | 3年間 | 5年間 |
---|---|---|
犬・小型・8kg | 189,882円 | 340,692円 |
猫・Sサイズ | 161,964円 | 273,933円 |
※フード料金は、公式HPのフード定期プランのページで確認できます。※5年間の費用は、1年目までのフードを犬はパピー価格、猫はキトン価格で算出しています。
上記はあくまでフード定期プランの料金シミュレーションになるため、譲渡犬猫の場合は価格設定が異なっているかもしれません。詳しくは譲渡時の確認になると思います。
なお、フード定期購入は断ることはできません。飼育確認を兼ねて定期的にフードを送られているようです。
ペット保険の加入が必須
ペット保険の加入も必要です。以下、Coo&RIKU譲渡犬・譲渡猫誓約書の内容です。※譲渡の犬猫 里親募集ページ記載の「ご誓約書ダウンロード」より確認できます。
●譲渡人は、譲受人にペット保険(保険会社は任意)加入を義務付けており、譲渡人の取扱う保険会社を推奨しています。
ペット保険加入を義務付ける理由としては、「健康維持のため」とのことです。
料金は、保険会社やプランにより様々ですが、月額1,000~3,000円くらいが一般的だと思います。また、推奨の保険会社は生体販売の際も勧められるアニコム損保のペット保険『どうぶつ健保べいびぃ』と思われます。※地域や店舗により異なるかもしれません。
病気の治療費は全て里親負担
誓約書の以下もご確認ください。
●譲受人へ引渡し後に発生する該当ペットの飼育費用、医療費用等全ての負担は譲受人の負担とします。
当たり前の話だと思いますが、譲渡後にペットが病気にかかった場合の費用負担は飼い主の責任になります。
生命保障制度には加入できない
クーアンドリクの生体販売では生命保障制度というものがあります。制度としてはペット購入後に不慮の事故等で亡くなってしまった場合、代替ペットの提供または生体の費用を保障するものです。
この制度の利用は、譲渡犬、譲渡猫の場合はできません。
理由としては譲渡では生体費用がかからないこと(諸経費はかかるが生体にかかるお金は0円)、生命保障制度自体が生体販売向けのサービスであることが考えられます。
以上、クーアンドリクの譲渡を通じて里親になる場合は、諸経費+フード代+ペット保険が必要になり、5年間の総額費用を考えると最低でも30万~40万円を見込んでおかないといけません。当然、飼育に必要なグッズや定期医療、病気の治療費などは別途かかってきます。
ここからはクーアンドリクの譲渡活動に関しての疑問点などを記載します。
譲渡活動開始当初は、保護犬猫の里親募集だった?
クーアンドリクの譲渡活動については、譲渡の犬猫 里親募集のページで活動の目的や方針を見ることができます。以下、一部を引用。
世界中の笑顔のために 新しい飼主さんを探す活動を始めます
大きな目的の一つは譲渡犬猫の飼い主探しであり、他にも愛護活動の側面があります。
不幸なワンちゃんネコちゃんをこれ以上増やさないために、お買い上げいただいたフードの売上げの一部を愛護団体へ寄付をしております。
とのこと。現状は上記の通りですが、活動開始当初は「保護されたワンちゃん・ネコちゃんの里親募集」の活動が謳い文句でした。以下よりサービス開始時の報道発表内容が見られます。
有限会社Coo&RIKU「新しい飼い主様に素敵な出会いを 保護されたワンちゃん・ネコちゃんの里親募集」-> https://www.value-press.com/pressrelease/219063
上記の報道発表内容より一部抜粋します。
【里親募集活動を行う意義】
現在の日本には、さまざまな理由によって飼い主様を失い、新たな飼い主様を必要としているワンちゃん・ネコちゃんが少なくありません。ペットショップで買い主様に出会えなかったり、病気を抱えていたりするワンちゃん・ネコちゃんを保護して里親の方に譲渡する活動を通し、大切な命を少しでも守りたい。そして、新たな飼い主様に素敵な出会いをご提供したい――。私たちはそう考えています。
【Coo&RIKUが行う里親募集活動の特徴】
一般的に、飼い主様を失ったワンちゃん・ネコちゃんは、動物愛護センターや動物愛護団体(NPO法人)などに一時的に保護されます。彼らに会うにはNPO団体が不定期に開催する譲渡会の会場に行くしかありませんが、開催場所や日程の関係から「なかなか気軽に行けない」という方もいるでしょう。Coo&RIKUでは店舗内に保護中のワンちゃん・ネコちゃんがいるので、いつでも気軽に会いに来ていただけるのが特徴です。
他にも「保護されているワンちゃん・ネコちゃんの種類や数がとても多いという特徴があります。」といった内容も見受けられ、Coo&RIKUで保護された犬猫を譲渡する活動と捉えて差し支えない内容だったと思います。ただし、「ペットショップで買い主様に出会えなかったり」といった記載もありますので、お店の売れ残りや販売が難しいと判断された犬猫も譲渡対象に入っていることもわかります。
ここまでの内容を踏まえ、Coo&RIKUの譲渡活動はさまざまな理由によって飼い主を失った犬猫を保護し、新しい飼い主を探す活動であったと考えられます。
また、動物愛護センターや動物愛護団体の譲渡活動を引き合いに出されてもいますが、Coo&RIKUの全国の店舗網を活用することでマッチングの場を提供するという奉仕活動的な側面もあったと思います。
現在は「保護犬・保護猫」の文言が一切出てこない
さて、Coo&RIKUの譲渡活動は開始当初「保護された犬猫」の譲渡活動とされていました。しかし、現在の公式HP掲載の「譲渡の犬猫 里親募集」ページを見る限り「保護犬」「保護猫」と言ったワードは一切出てきません。あくまで「譲渡犬」「譲渡猫」の飼い主募集となっています。(誓約書の書類名も「COO&RIKU譲渡犬・譲渡猫誓約書」となっています)では、譲渡の犬猫はどんな犬猫なのか?と言えば、よくある質問の回答には以下のように掲載されています。
Q.01どうして 譲渡の犬猫になってしまったの?
飼い主に依頼されて引き取ったり、飼い主様から逃げてしまったり様々なケースがあります。 ワンちゃん、ネコちゃんを手放した理由までは分からない事が多いです。 健康状態が万全な子や外傷や疾患を持っている子、人に慣れている子、いない子など様々です。
「様々なケース」でお茶を濁していますが、これだけ見てしまうとお店の売れ残りや販売が難しいと判断された犬猫が対象になっているとは読み取れません。正確な回答や誠実な回答であるとは言えないと思います。加えて「飼い主に依頼されて引き取ったり」としているにも関わらず『家で飼えなくなった犬猫あるいは捨て犬猫を保護してほしい』の質問の回答では、
「今現在は一般の方からのお引き受けは行っていません」と掲載されています。
この回答から推察するに一般の方ではない飼い主からの依頼のみ引き取っていると受け取れます。なるほど、一般ではない方とはどういった方を指しているのか聞いてみたいものですね。
譲渡犬猫には、遺伝子病検査でリスクのある個体が含まれる
こちらの譲渡対象である犬猫がどんな犬猫であるかは、Coo&RIKUの公式Youtubeアカウントの動画で紹介されています。動画タイトルは以下の通り。
「ペットショップCoo&RIKU「里親」犬編 クーリク」「ペットショップCoo&RIKU「里親」猫編 クーリク」
年間5万頭の遺伝子病検査を実施しており約99%が健康です。遺伝子病リスクのある残り約1%の行き場のない犬猫を里親に託す活動をしていると紹介されています。こちらの動画は約3年前ものになりますが、犬猫合わせて10万頭のうち約1%が遺伝子病リスクを持ち、頭数としては年間約1,000頭が譲渡の対象になっていたと考えられます。
しかし、現状は遺伝子病検査に対する取り組みのページで紹介されているデータを見る限り、1%未満(約0.7%)まで低減されているようです。
また、遺伝子病検査の実績と譲渡活動の実績から勘案すると、譲渡対象の犬猫の約1割が遺伝子病リスクのある個体であることが推測されます。
里親になる場合、健康リスクの覚悟と理解が必要
Coo&RIKUの譲渡を通じて里親になる場合、遺伝子病リスクのある個体も一部含まれますが、ペット保険の加入が必須であるため何かあればペット保険の利用も可能なのかもしれません。
しかし、一般的なペット保険では加入時に健康状態や疾病に関する告知義務があり、持病やすでに発症している先天性疾患は(もしくは先天性疾患すべて)補償対象にならないことがあります。また、高齢の場合も加入条件を制約される場合もあります。
Coo&RIKUが推奨する保険では広範囲にカバーしてもらえる可能性もあるかもしれませんが、いずれにせよ譲渡を希望する場合は健康状態の確認と健康リスクに関して責任を以って望むのがいいと思います。
ここまでが主に譲渡活動に関しての疑問でした。最後に寄付金についても触れておきたいと思います。
Coo&RIKUの動物愛護団体への寄付金は、里親のお金では?
Coo&RIKUでは、フードの売上げの一部を動物愛護団体や医療施設へ寄付しています。
以下は、CSV活動の紹介ページに記載の寄付金額です。2023年9月時点で「40,642,454円」
次に、譲渡の犬猫 里親募集ページに記載の寄付金額です。2023年10月時点で「39,442,454円」
若干ですが譲渡の犬猫 里親募集ページに記載されている寄付金額の方が少ないようです。素直に読み取れば、譲渡活動を通じて販売したフード代金の一部より寄付したものの累計が「39,442,454円」であると考えてしまいますが実際のところはどうなのでしょうか?(2023年10月実績で1,200,000円とあるので累計額も譲渡活動を通じて寄付した金額の数字だと思われますが・・・)
もし、素直に読み取った通りであれば寄付金のほとんどが里親が購入するフード代金から支払われていることになり、Coo&RIKUが寄付しているというより里親が寄付しているように思えてしまうのですがどうなのでしょうか。
Coo&RIKUの譲渡活動を通じて里親になるにはフードの定期購入が必要です。別のフードを食べさせる選択肢がありません。そして、里親が支払っているフード代金の一部が寄付金に賄われています。ですので、この寄付金は会社の営業努力で販売した代金から寄付するものとは性質が異なります。
それをあたかも会社の実績のように見せる姿勢に疑問を感じてしまいます。
以上になります。
譲渡の犬猫の場合、一般的にはどこかで保護された犬猫であるため、健康状態はおろか年齢さえわからないことが多いです。このためペットショップなどで販売されている個体より健康リスクはつきものです。そのうえCoo&RIKUの譲渡犬猫の場合は、遺伝子病リスクのある個体も含まれるためそれ相応の知識のある方以外が飼うのは難しいと思われます。
また、Coo&RIKUのCSV活動(社会貢献と事業活動の一環)とされる譲渡活動に関して活動内容に疑問を感じられる方にも向かないでしょう。
Coo&RIKUの譲渡活動を通じて里親になる場合、よくよく確認の上で検討をするのがよろしいかと思います。