保護犬や保護猫の譲渡では何らかの費用がかかることが多くなりました。それも数千円ならまだしも数万円もの金額を請求されることが多いため、ペットショップで購入しているのと変わらないのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。
昔は…と言っていいかわかりませんが、近所のお家で犬が産まれたら欲しい人は譲ってもらったり、野良猫であれば保護してそのまま飼うということもよくある話だったと思います。もちろん今のご時世でも耳にされる話かと思いますが、こうしたケースと保護犬・保護猫の譲渡を同じように考えてしまうと「えっ!?無料じゃないの?」なんて思ってしまうのかもしれません。
とはいえ、保護猫の譲渡は生体販売ではありません。基本は無償譲渡。費用が認められるのは医療費などの実費だけです。
※第一種動物取扱業者の登録をしていない人が譲渡の際に何らかの対価を得ると動物愛護管理法違反(無登録営業)として100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
さて、寄付金、支援金という名目で数万円、初期医療費で数万円、その他行政手続きにかかったお金や飼育費用で数千円など、合計したら結構な金額。う~ん、これって購入するのと変わらないんじゃ…モヤモヤされる方も多いような気がして記事にしてみました。
▼目次
- 譲渡と言っても有償譲渡が多い
- 譲渡に対価を要求するのは販売と同じ
- 保護猫が有償譲渡の場合、共感された方が支援するという建て付け
- 支援金、寄付金などの費目は強制であればアウト
- 輸送費、交通費は、双方納得の上で
- 保護犬・保護猫活動ってボランティアではないの?
譲渡と言っても有償譲渡が多い
保護犬・保護猫を支えているボランティア団体さんでは、もうほとんどが有償譲渡だと思います。付け加えれば個人で活動されている方ですら有償譲渡だったりします。特に犬猫の里親募集サイトの登録情報を見ると9割方が有償譲渡であったりします。
たしかに、犬や猫を保護して病院で健康状態を診てもらえばお金がかかります。ワクチン接種やウイルス検査もすれば費用がかさみます。日々の餌代もばかになりません。実費がかかると言われたら納得でしょう。
とはいえ、保護犬や保護猫を迎えようと考えている方がタダで引き取ろうと思うのは別におかしな話ではないと思います。全ての方が保護動物の事情に詳しいわけではありませんし「行き場がなく困っているならうちで面倒を見てあげよう」くらいの気持ちの方も大勢いらっしゃると思いますので。
譲渡に対価を要求するのは販売と同じ
保護猫の譲渡の基本は、無償譲渡です。冒頭でも書いたとおり第一種動物取扱業者の登録をされていない方が何らかの対価を得るのは違法です。ただし、対価=報酬を得るのはダメですが、保護して譲渡するまでにかかった費用=実費であれば費用請求は可能。一方、対価=報酬を得て利益を出すことは違法です。では、一般的にどのような費用が実費として請求が可能かを見てみましょう。
- マイクロチップ挿入費
- 健康診断・ワクチン接種・ノミ、ダニの駆虫費
- 病気や怪我の治療に要した医療費
- 不妊去勢手術費
- トリミング代(爪切り・シャンプー・カット)
- 餌代等の飼育費
- 保護猫を届ける際にかかった交通費
これら以外にも保護犬であれば畜犬登録録料やデータ登録料も実費として請求が可能でしょう。
また『実費』というからには、初期医療費が一律いくら、交通費が一律いくらなどもNGです。本当に支払った金額が実費です。さらに、お金だけでなく菓子折りなども何らかの対価に含まれます。対価には、金品(物品)も含まれるということです。
保護猫を譲渡して受け取った代金からスタッフの交通費を払ってあげている団体もあるかもしれませんが、それをやったら一般的な商売をされている会社と同じです。ペットショップがペットを販売して売上金から従業員の交通費を支払っている構図と同様になります。販売と同様の行為と見なされても仕方ありません。
保護猫が有償譲渡の場合、共感された方が支援するという建て付け
実費の費用請求が可能とは言え、医療費や支援金、病気の治療費まで支払いが必要とくれば費用はかなりかさみます。概ね3~5万円程度が相場ではありますが、実費の費目からもやってることはペットショップの販売と変わらないと考えてしまう方も少なくないと思います。
さて、保護猫の譲渡は、善意の引取り(無償)なのか、ボランティア活動に対する支援なのか、それとも購入と変わらないようなものなのかどちらになるのでしょうか?はっきりされていないのが問題なのだと思います。
個人的な考えになりますが、有償譲渡の場合は『ボランティア活動に対する支援』と考えるのが良さそうだと思いました。
しかしながら、支援であると考えると共感による自発的な協力であるべきだと思いますので、譲渡費用にほぼ強制的に寄付金や支援金が組み込まれていたり、当然のように費用請求をされるボランティア団体に対して、共感しづらいと感じる方もいらっしゃるのかなと思いました。
支援金、寄付金などの費目は強制であればアウト
前述の通り、支援金、寄付金などの請求は強制できません。あくまで任意のため賛同された方が払えばいいお金です。決められた寄付金額等が譲渡費用に含まれる場合は、違法の可能性があります。
それから寄付や支援にお金を要求するところにもモヤっとするのかもしれません。寄付や支援というからにはペットフードやトイレや猫砂、シーツなどの物であっても構わないはずです。こうした物品でもいいですよ、みたいなのって少なくとも里親募集サイトの募集要項では見たことがありません。
輸送費、交通費は、双方納得の上で
実費であれば費用請求は可能なので、輸送費や交通費も実費であれば費用請求が可能です。でも、遠くから来られて突然、車移動でガソリン代がいくらいくら、高速代がいくらいくら、ガソリン代も本当に全部使われたかわからない満タン代の領収書を見せられて支払えと言われても困るでしょう。
譲渡の際の受け渡しは、どちらが出向くのか、移動手段は何になるのか、いくらくらいかかるのかは事前に確認し、双方納得の上で決めるのがいいのと思います。特に車の交通費がかかる場合は、高速代やガソリン代(燃費にもよるため)は、トラブルになりやすい部分だと思います。
保護犬・保護猫活動ってボランティアではないの?
ボランティア活動というとどのようなイメージでしょうか?『ボランティア=無償』みたいなイメージはあるような気がしますがいかがですか。
例えば、町内のゴミ拾いもボランティアです。会社で行っているところもありますし、団体が開催されているところもあります。個人や町内会などもそうかもしれません。ゴミ拾いに必要な手袋、ホウキやチリトリ、トングなどは支給されれば無償かもしれませんが、ご自分で用意されたとしても実費の請求などしないですよね。
また、被災地に出向いてボランティア活動をしたとして、交通費を誰かに請求しますか?
そもそもボランティアとは、社会貢献を自主的に行う活動です。報酬を求めるものではありません。(報酬を求め始めたらアルバイトと変わりません)
しかしながら、保護犬・保護猫団体のボランティアはというと実費ですが譲渡費用を求めてきます。報酬ではないのでボランティアの範疇なのかもしれませんが、どうにもこうにも例に挙げた身近なボランティア活動とは異なるようです。
なんだか保護犬・保護猫を引き取るのって、引き取る変わりにボランティアで活動される方々の負担を軽減するためにお金を支払う感じがしてしまいます。そう思うと保護犬・保護猫を引き取ることは、間接的にボランティア活動をしているのと同じような気がしてきますね。だって、猫を引き取りお金も寄付や支援のような形で保護団体に支払うことになるので。
