野良猫にホウ酸団子。致死量は?駆除したら法律は問題なし?

 まず始めに。野良猫を駆除すること。これは動物虐待に該当します。

動物の愛護及び管理に関する法律

第四十四条 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。

動物の愛護及び管理に関する法律

加えて、ゴキブリを駆除する感覚で、野良猫にホウ酸団子を喫食させる行為は、頭おかしいと言われても仕方ない所業だということ。
正常な感覚の方なら、この異常な行為に眉をしかめ、胃に熱いものを感じ、吐き気や反吐をもよおすような下劣な行為というものです。

しかし、猫被害に遭われる方は、本当に精神的にきつくなることも実際にあります。

毎日、知らない猫の糞掃除をする羽目になったらどんな気持ちでしょうか?
大切にしている花壇、家庭菜園、愛車などに被害が及んだら?それが頻繁だったら?深刻だったら?
放し飼いの猫が悪戯をしたとして、飼い主に悪びれる様子が微塵もなかったら?

他にも猫アレルギー、猫嫌いの人もいます。

猫アレルギーって言っても、くしゃみとか鼻水出るくらいでしょ?
猫嫌いって言っても、そこまでじゃないでしょ?

と思う方もいるかもしれませんが、重度なアレルギー症状の方も少なからずいます。
猫嫌いもゴキブリを嫌う人と同じくらい猫が嫌いという人もいます。

一概には言えず、被害に遭い続け、悩ませ続けられれば、ホウ酸団子で野良猫を駆除しよう。なんて愚かな行為を考えてしまうこともあります。

こちらの記事は、ホウ酸団子を使った場合、致死量がどの程度か、法律的にはどうなるのか、敷地内だったら、公共の場だったら、などを真面目にまとめました。

▼目次

  1. ホウ酸団子でゴキブリ駆除は昔からある駆除方法
  2. ホウ酸団子の致死量
  3. ホウ酸自体は、簡単に手に入り、安い
  4. ホウ酸団子の作り方
  5. もし敷地内にホウ酸団子を置いて、野良猫が死んだら罪に問われるか?
  6. もし公共の場(公園など)にホウ酸団子を置いて、野良猫が死んだら罪に問われるか?
  7. もし敷地内のホウ酸団子を放し飼いの猫が食べて死んだら罪に問われるか?
  8. 犯罪になるような行為はやめるべき、別の方法で

ホウ酸団子でゴキブリ駆除は昔からある駆除方法

ホウ酸団子でゴキブリを駆除する方法自体は、昔からある方法で、自治体のホームページでも紹介される程メジャーな駆除方法です。

ホウ酸団子をゴキブリ駆除に使う場合、通常は、屋内のキッチン周りや洗面所などよく行き来されてしまう場所に設置するものですが、飲食店が隣近所にあるなど場合によっては、屋外に置くこともあります。

近所付き合いがある地域なら設置していることをお伝えして注意を促すこともされているとは思いますが、特に何も言わずに置いておくお宅もおられることでしょう。

市販品のホウ酸団子は、ケース入りのものや辛み成分が入っているものが多く、誤飲をしにくい工夫がされています。
悪意のあるケースでなければ、猫が誤飲して亡くなってしまうことは少なく、事件やニュースなどに取り上げられることはないものと思われます。

ホウ酸団子の致死量

ホウ酸の毒性

致死量 中毒症状
成人 15~20g 1.0~3.0g
幼児 5~6g 1.0g未満
乳児 2~3g 1.0g未満
2~12g 0.3~1.8g

※おおよその数値

猫の場合は、体重1kgあたりの致死量が、1.5~3.0g と言われます。
成猫の平均的な体重4kgであれば、6.0~12.0g が致死量となります。

また、猫はホウ酸を排泄することができるため、少量の誤飲で特に中毒症状が見られない場合は、それほど心配しないでも大丈夫なようです。

※中毒症状=吐気、腹痛、下痢、けいれん、腎臓の障害

ホウ酸自体は、簡単に手に入り、安い

ホウ酸自体は、ホームセンターや薬局(ドラッグストア)などで購入できます。

市販品は、

「ホウ酸団子」として売られているもの
「ホウ酸粉末」として売られているもの

があります。どちらも価格は高い物ではありません。

500円~1,000程度の間で購入できます。

また、市販品のホウ酸団子は、ホウ酸の濃度が様々です。
ゴキブリに対しては、濃度が40%未満のものは効果が薄いとされていますので、濃度が高いものを選ぶのが良いでしょう。

ホウ酸団子の作り方

ホウ酸団子を自分で作る場合

ホウ酸 50g
小麦粉 30g
玉ねぎ 35g
砂糖 6g
牛乳 適量
焼肉のタレ 数滴

玉ねぎは、すりおろしたものを使用します。
砂糖は、小さじ1杯よりやや多めになるくらい。
焼肉のタレは駆除対象の誘引目的のため、数滴混ぜておくもの。

これらの材料をよくこねて団子を作る。(手袋必須。手が荒れる)
できた団子は、2~3日天日干しにして固める。

概ねこの感じで出来上がります。

※玉ねぎが入っているのは、ゴキブリの好物であるため。逆に猫はネギ類が苦手で中毒症状を起こします(赤血球が破壊されてしまう)。
※むろん、このレシピはゴキブリ用です。
※仮に猫用を作るのであれば、好物を主な材料として作ります。

もし敷地内にホウ酸団子を置いて、野良猫が死んだら罪に問われるか?

動物愛護法第四十四条を確認します。

『愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。』

この条文を見る限り「みだりに」殺したり、傷つけなければ罪に問われないと読むこともできます。

「みだりに」ということは、特に正当な理由がなく。ということです。

この「みだりに」という一文があることで、正当な理由で殺すこと=保健所で殺処分することを正当化しています。
この一文がなければ、保健所も殺処分の業務が行えなくなります。

では、敷地内にホウ酸団子を置いておき、野良猫が勝手に食べて死んでしまったら?

ゴキブリ駆除の為に置いてあったものを野良猫が誤飲してしまうケース
野良猫駆除の為、意図的に置いたものを野良猫が喫食したケース

これらに分かれると思います。

ゴキブリ駆除の為に置いてあったものを野良猫が誤飲してしまうケース

さて、ゴキブリ駆除の為に置いておいたものを誤飲してしまったとして、それが「みだりに」殺したことになるでしょうか?

もし、敷地内のホウ酸団子、またはそれ以外の害虫・害獣駆除剤、農薬など、それを勝手に野良猫が食べてしまって罪に問われるとしたら、動物愛護法の強権さに恐怖しませんか?

このようなケースで、過去の判例は見当たらなかったので「みだりに」を立証するのが難しく、罪に問われることがないのだと思われます。

野良猫駆除の為、意図的に置いたものを野良猫が喫食したケース

こちらは、野良猫駆除の為であることが立証されれば、動物虐待に罪に問われることになります。

しかし、この「立証」が難しいところで、家主がゴキブリ駆除の為だった、ネズミ駆除に使っていた。と言ったらどう立証すべきでしょうか?

むしろ、ホウ酸団子のように市販されている法律上問題のない物を敷地内に置き、野良猫が勝手に食べて死に、これで罪に問われてしまう方がおかしいと思います。

管理人が確認した範囲では、何かの罪に問われたり、逮捕されるケースは見当たりませんでした。現行法の範疇ではこのケースを罪に問うことはかなり難しいものだと言えると思います。

もし公共の場(公園など)にホウ酸団子を置いて、野良猫が死んだら罪に問われるか?

以下は、大阪地方裁判所の判例。

公園に毒餌を置き、食べた犬が死んだ事件

求刑

犬の飼い主が公園のふんの後始末をしないことに憤慨して、大阪市平野区の公園に殺虫剤つきのインスタントめんを置き、食べた犬が死んだ事件で逮捕・起訴された無職の男性(76)に対し、検察は懲役1年6月を求刑した。

判決

「被告は犬の飼い主にマナー違反を注意したが聞き入れられず、生活環境を守ろうという気持ちからの犯行だが、身勝手、悪質だ」として懲役1年4月・執行猶予3年の有罪を言い渡した。

【大阪地裁 H13年9月31日】


こちらの判例のように、明らかに犬を殺害する意図で毒餌を置き、実際に犬を殺害し、身勝手、悪質な行為(正当防衛などの正当な理由のない行為)として、有罪となったケース。
背景には、犬を殺された飼い主による懸命な犯罪の立証努力があるとは思いますが、犯罪として認められるケースも実際に起こっているということです。

もし敷地内のホウ酸団子を放し飼いの猫が食べて死んだら罪に問われるか?

まず、先にも記載した通り、家主がゴキブリ駆除の為だった、ネズミ駆除に使っていた。と言ったらどう立証すべきか?
これが難しいため、動物虐待に該当する「みだりに」殺したことを問うのが難しいということ。

では、民法第709条の不法行為責任を問うことはどうか?

放し飼いされている猫の存在を知っており、ホウ酸団子を猫が誤飲してしまう場所に設置しておくことは、問題が起こると分かっていたのに、十分な注意を払わなかった。

と、言えなくもありません。

これが「過失」と認められれば、損害賠償の責任を負うことは十分にあり得ると思います。

もちろん、加害者に過失があったことを証明しないといけませんが、具体的に証明する客観的材料を出すことが難しいのも事実でしょう。

単純な話、放し飼いをしていて猫が家に帰ってきたら足を怪我していた。
この怪我は誰にやられたものなのか?
これを証明するのは相当難しいと思います。
おそらくあの人がやった。では、罪に問うことはできません。
客観的に示す証明が必要になるため、立証するのが難しいのです。

犯罪になるような行為はやめるべき、別の方法で

当然ですが、犯罪になる行為、なるような行為は止めておくべき。
どうしても野良猫にいなくなって欲しければ、別の方法を取るべきです。

  • 保健所に持ち込む
  • 警察へ遺失物として届け出る
  • 動物愛護団体に引取りの依頼・相談する
  • 里親を探す

子猫であれば、迷い猫などとして警察に遺失物として届けた方が早いかもしれません。
成猫であれば、保健所に持ち込む。野良猫は引き取らない保健所もありますので、事前に確認をしましょう。

※この方法を勧めるものではありません。あくまで手段として例にあげさせていただいています。

動物愛護団体への依頼、里親探しは、割愛します。
良心を望むならこの方法ですが、野良猫被害に遭われてしまう場合、被害が重度になるとその方に慈愛を求めるのも酷なことがあります。

また、近所の方が餌やりをしていることで、居着いている、敷地内に入られてしまう。ということであれば、餌やりを何とかすることの方が解決に近付くかもしれません。


以上になります。長々をお読みいただきありがとうございました。参考になれば幸いです。

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のらねこらむプロフィール

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のらねこらむ管理人

2017年4月に新居へ引っ越した直後から野良猫に悩まされる。
日々、野良猫との領地争いを繰り広げています。

対策グッズのほとんどは、実際に買って・試した結果をまとめたものです。
当サイトの情報が皆様の野良猫対策の助けになれば幸いです。
詳しいプロフィールは、こちら

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