「猫は三年飼っても三日で恩を忘れる」
と、諺で言われるようにつれない動物です。そのくせ一度でも餌をあげたら毎日のようにやってきたり。記憶力がいいんだか悪いんだか・・餌を与えて可愛がっていた人からすれば、三日で忘れられたら悲しいですね。
さて、野良猫は餌をくれた人のことをどの程度覚えているのでしょうか?
そもそも記憶とは
私達ヒトも全てを覚えることはできません。好きな事、大事な事、嫌いな事、嫌な出来事、興味関心を惹かれる事・・など、取捨選択して記憶します。街中ですれ違った人の事を覚えていないのは取捨選択の結果と言えるかもしれませんね。
取捨選択して必要な事が脳に蓄積されて、必要なときに思い出すことができる情報が記憶です。
猫は人より脳が小さく、知能は人の2~3歳程度と言われています。ですので、猫達も取捨選択をして記憶をしています。
猫がよく覚えていること
猫は単独で行動し、狩りをして生活をする生き物なので、身の安全を確保すること、食料を確保することに記憶のエネルギーを使います。
天敵がどの動物であるのか、天敵がいる場所はどこなのか、安心して身を隠せる場所はどこかなど、身の安全を確保することは第一に覚えます。
また、食料もなければ飢えますので、狩り場、餌場はどこなのか、捕食動物の狩り方、人からの餌のもらい方(すり寄ったり、鳴いたり)もよく覚えています。
また、嫌な事もよく覚えており、飼い猫なんかはキャリーバッグを見ただけで逃げ出すこともあります。病院に連れて行かれ、痛い思いをしたことを覚えているということですね。
この場所は、いい餌場
ネズミを捕るとき、猫はネズミが巣穴から出てくるのをじっと長い時間待つことがあります。そして、巣穴から油断して出てきたネズミを素早く捕獲し、食事にありつく。
この場所が獲物の巣穴であること、この場所で餌にありつけたという体験
これらが紐づいて、「この場所は、いい餌場」と理解しているわけです。
ですので、人が餌を与えた場合、この場所に来たら、見知らぬ脊椎動物が餌を出してきた。ここは簡単に餌にありつけるいい餌場だ。という記憶が残ります。
餌をくれる人のことは覚えているのか
上記で述べたように、野良猫にとって大事なことは、食料確保、いい餌場はどこなのか。ということです。だから、餌をくれる人のことは二の次になっちゃうんですね。
コンビニで餌をもらっている野良猫を思い浮かべると分かりやすいと思いますが、特定の人に餌をもらいに行っているんじゃなくて、この場所に来ると餌をもらえるから来ている。って感じではないでしょうか。もちろん匂いに釣られて・・・っていうのもあると思います。
かと言って、「餌をくれる人」は認識していないわけではなく、もちろん認識しています。なんだったら餌をもらえる時間帯まで把握しています。
どうやって認識しているかと言えば、視覚を使って姿形を、聴覚を使って足音や声を、嗅覚を使ってその人の匂いを覚えています。こういった感覚を使った覚え方をしていると思います。
人もそうですが、感覚を使った記憶というのは保持期間が短いもので、視覚で言えば、よく目にするものでないと覚えていられません。
ですので、猫達も毎日のように頻繁に餌をくれる人のことは覚えているでしょうが、少し間が空いてしまうと人のことは忘れてしまうことが多いと思います。
こちらもご参考。野良猫にとって人とはどんな存在か!?
猫にも個性ある
餌を毎日あげているのに、懐く気配がない、警戒して近付くと逃げる。まるでまったく覚えていないような素振り。
野良猫は人に慣れていないことが多いので、心を開いてくれる猫もいれば心を開いてくれない猫もいます。心を開いてくれない猫は、警戒して餌を置いても近くに人がいると食べなかったり、恐る恐る食べるだけ食べて一目散に逃げていく場合があります。
懐いてすり寄ってきたり、鳴いたりする野良猫もいるんですけどね。
また、久しぶりに会ったのに猫の方から近付いてきてくれた。といった話もあります。覚えていてくれる猫は覚えているのかもしれません。
実は覚えてくれているかも!?
猫の身振り素振りって、読み取りにくかったりしますよね。
なので、実は覚えてくれているけど、人がそれに気づいていないってこともあるかもしれません。
猫の視覚はさほどよくありませんが、聴覚、嗅覚といった感覚は人より優れています。人が思いも寄らない記憶の仕方をしているかもしれません。
餌の与え方でも変わってくる?
野良猫の餌の与え方も人それぞれです。うちの近所の餌やりさんのやり方だと、
- 玄関先で餌皿に入れて
- 地面にばら撒き
- ビニール袋に入れたものをポイ捨て
結構雑です。本当にこの人達、猫が好きなんだろうか?と思ってしまうくらいです。手にもった餌を食べさせる方法もあると思いますが、近所の人がそうしているのを見たことがありません。
さて、餌の与え方で覚えてくれているかが変わってくるかという話ですが、これもあるのではないでしょうか。
例えば飼い猫だと、エサ皿を用意する動作、戸棚を開ける音、缶が空く時の金属音、これはもう餌が出てくるってわかります。それより前にこの人がこの時間帯に声をかけてくれるとエサの時間だ。なんて覚えている子もいるかもしれません。
野良猫に餌を与えている人もエサ皿を叩き音を鳴らして猫を集めたり、声をかけたりして呼び寄せる人もいます。人から合図を送って餌を与えている点は、飼い猫と近いものがあるのかもしれません。
ここまでだと、人を覚えているかというより、音などの合図で覚えているように思えますが、おそらくこの場合は、合図の方で記憶をしているように思います。
少し視点を変えて、手から餌を与える時のことを考えてみましょう。この場合、手の平に餌をのせて食べさせたり、手で餌をつまみ口に移してあげたりするわけですが、野良猫との距離はぐっと近づきます。加えて、手から餌を与える人は、食べてる姿を見て愛おしく、猫の身体を撫でて可愛がりたいと思う人が多いと思います。野良猫の方もよっぽど臆病な子でなければ、エサをくれた見返りに身体を撫でさせてくれます。そうするとどうなるか?お互いの身体にはお互いの匂いがつくわけです。猫からすれば相手に自分の匂いがつけば安心できますし、自分に人の匂いがついてしまうのも、嗅覚を使った記憶につながる導線が増えるというものです。
野良猫と接する時間の多さで覚えてもらえるかそうでないかという話なのかもしれませんが、少しは違いが出てくると思っております。