野良猫の多い地域では、糞尿、鳴き声、ゴミ漁り、花壇を荒らされるなど様々な問題が起こります。
その問題の当事者からすると、野良猫が居着いていることで自分達の生活環境が脅かされている。と、思ってしまうのも仕方がないことです。時々の問題ならある程度の我慢はできますが、「被害」と言うところまでいくと糞も鳴き声も毎日のように困ることがあるわけですから。
そこで、何かしら対策を講じるわけですが、うまくいく場合もあればそうでない場合も・・・いっそのこと、野良猫を山などに移動させてしまおう。と考える方もいると思います。
では、野良猫を捕まえて山などに移動させてしまった場合、何らかの法律に触れるのでしょうか?
先に結論からお伝えすると動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)の第四十四条 愛護動物の遺棄に該当し、違法行為となります。
動物愛護法で定義されている「遺棄」について、どんなケースが遺棄となるのかを詳しく見ていきます。
▼目次
- 動物愛護法 第四十四条 3項 遺棄に関しての条文
- 環境省「愛護動物の遺棄の考え方に係る通知について」
- 猫島など有名な猫スポットに猫を捨てるのは?
- 猫カフェやペットショップに捨てるのは?
- 自治体の職員が野良猫を山林に放して書類送検されています。
飼養されている愛護動物とは
生命・身体に対する危険に直面するような場所とは
動物愛護法 第四十四条 3項 遺棄に関しての条文
動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)第四十四条3 愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。
※愛護動物とは、牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひるであり、野良猫も含まれます。
動物愛護法では、遺棄に関しての内容はこれだけです。定義がなく、遺棄の判断が難しかったため、環境省より遺棄の考え方の通知が出されています。(平成26年12月 都道府県へ通知)
環境省「愛護動物の遺棄の考え方に係る通知について」
詳しくは以下の文書で確認できます。
環境省「愛護動物の遺棄の考え方に係る通知について」(PDF)
どういった行為が遺棄に該当するかを要約すると
- 飼養されている愛護動物は、健康であっても遠く離れた場所への移動、置き去りはダメ
- 飼養されていない野良猫であっても生命・身体に対する危険に直面するような場所への移動はダメ
- 老齢・幼齢・負傷動物は、場所の状況に限らず、遠く離れた場所へ移動させてはダメ
これでもわかりづらいので、もう少し詳しく説明すると
飼養されている愛護動物とは
人から餌をもらって人の保護を受けている愛護動物のこと。通常は、ペットのことを指すとは思いますが、「飼養」という言葉を使われていることから、人から餌をもらっている野良猫も飼養されていると解釈されてもおかしくありません。
※飼養=動物に水や食物を与え、養い、育てる。です。餌をもらっている野良猫も飼養されていると解釈ができなくもないですね。
飼養されている愛護動物は、移動させた後に自分で捕食することが難しく、その為、飢えや疲労から生命・身体の危険に直面するおそれがあると考えられるためです。
生命・身体に対する危険に直面するような場所とは
- 生存に必要な餌や水を得ることが難しい場合
- 厳しい気象(寒暖、風雨等)にさらされるおそれがある場合
- 事故(交通事故、転落事故等)に遭うおそれがある場合
- 野生生物に捕食されるおそれがある場合
上記のように定義をされています。
これを言われたら保護施設のような場所にしか移動できない。ってことですよね。
負傷していたら保健所へ連絡を
負傷動物(疾病含む)に関しては、動物愛護法で保健所または動物愛護センターへの通報の努力義務が設けられています。(動物愛護法 第三十六条)動物病院で診てもらうことが難しければ、速やかに通報するのがいいでしょう。引取りに来てくれます。
猫島など有名な猫スポットに猫を捨てるのは?
宮城県の田代島、福岡県の相島など有名な猫島スポットに野良猫を移動させるのはどうでしょうか?
野良猫が自由に過ごせる楽園のようなイメージがあるかもしれませんが、猫を保護するような活動をしていませんし、捨て猫ウェルカムなんてこともありません。そもそも捨て猫はダメです。
それでも野良猫と共存できている環境であるなら、生命・身体に対する危険に直面するような場所ではないのでは?という見方もあるかもしれませんが、結局のところ、「・・・おそれがある場合」と定義されてしまうと、猫島のような場所でもその可能性は十分にあるでしょう。
猫の保護施設でも受け入れをしているようなこともないので、そもそも捨て猫がダメ、生命・身体に対する危険に直面するかもしれない場所でもあるので、やっぱりダメです。
猫カフェやペットショップに捨てるのは?
第三者の保護を期待して捨てるわけですが、これもダメです。仮に猫カフェやペットショップの玄関に置いていったとして、その店主や店員が保護をするとは限りません。結局のところ、生命・身体の危険に直面するおそれがある。と考えられます。
また、これは野良猫ではなく飼い猫の話になりますが、ペット用のキャリーごと置いていかれてしまうと、捨て猫か置き忘れ(忘れ物)かわかりません。所有者がいる可能性がある場合は、安易に保護できません。店主や店員にできることは飼い主の連絡先の確認と警察への通報くらいです。保護することすら難しい状況が、場合によってはあったりします。
(管理人的には、「保護猫カフェ」このネーミングがよくないと思います。捨てる側からすれば置いていけば保護してもらえると身勝手に考える人が少なからずいます)
自治体の職員が野良猫を山林に放して書類送検されています。
捕獲した猫を捨てたとして、三重県警四日市北署は同県川越町の男性職員2人を動物愛護法違反(遺棄)の疑いで津地検四日市支部に書類送検されています。(2013年11月)
住民からの苦情を受け、自治体の職員が野良猫を保護したり、引き取ったりしていたようです。その猫達を保健所へ引き渡すと殺処分になり、可哀想だと思って山林に放したというのが事の顛末。
なお、告発したのは、動物愛護団体だったそうで、遺棄にあたるとして100万円以下の罰金刑を求めたそうです。(判決は不明)
以上になります。野良猫を捕まえて、遠くに移動させる。という行為自体、違法行為ということですね。