野良猫の餌やりは私有地だったら問題なし?

 野良猫の餌やりを禁止したり制限するような法律、条令は存在しません。餌やり自体は現行法でも問題はありませんし、お腹を空かせている、困っている動物の手助けすることは動物愛護の観点からしても正しいことだと思います。

また、野良猫の餌やりに困っている人も餌やりの行為自体を問題視しているのではありません。野良猫が周辺に住み着く、増えることで生活環境が悪くなり困っているわけです。極度の猫嫌いでなければ、餌やりの行為自体を敵視するなんてありません。

さて、自宅や庭で餌をやる分には誰にも迷惑がかかっていないと思う方もおられるかもしれませんが、餌があればその周辺に居着きますし、他の猫も呼び寄せます。周囲は騒がしくなりますし、食べたら出る物があるわけです。栄養が付けば繁殖して数も増えることにもつながります。

近隣の方々に配慮した餌やりであれば問題ないのかもしれませんが、自由に行き交う野良猫達の全てを面倒見ることは無理な話でしょう。出来得る限りの事をしていたとして、近隣の方に猫嫌いの方や猫アレルギーの方、花壇や家庭菜園に糞をされてしまうお宅では、受け入れがたいことが多いと思います。

こうした生活に係る問題は、よっぽどの事態にならない限り裁判沙汰になるようなことはありませんが、それも近隣住民の方の我慢があってのことだと思います。

餌やり自体は問題ありませんが、野良猫が居着くこと、増えること、自由に行動することで起こる問題は、法律や条令で明文化され、場合によっては餌やりをする当事者に責任が問われます。

▼目次

  1. 動物愛護法の周辺の生活環境の保全等に係る措置
  2. 自治体の生活環境や動物に関する条例
  3. 裁判判例①野良猫への餌付けで55万円の損害賠償
  4. 裁判判例②猫への餌やり禁止等請求事件。慰謝料204万円
  5. 猫の存在が問題ではない。猫に係る人の問題

動物愛護法の周辺の生活環境の保全等に係る措置

動物の愛護及び管理に関する法律では、第四節において周辺の生活環境の保全等に係る措置が規定されています。

動物の愛護及び管理に関する法律

第二十五条 都道府県知事は、動物の飼養、保管又は給餌若しくは給水に起因した騒音又は悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生等によつて周辺の生活環境が損なわれている事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、必要な指導又は助言をすることができる。

さらに、この後に続く2項、3項では生活環境が損なわれている事態が生じていると判断された場合に、都道府県知事が当事者に必要な措置を取ることを勧告できるとし(2項)、勧告に応じなければ期限を定めて命ずることができるとしています(3項)。
また、4項では飼養や保管に問題があり、動物が衰弱する等の虐待を受けるおそれがある事態も同様に、必要な措置の勧告や命令を都道府県が行えるとしています。

この第二十五条には罰則規定も設けられており、

第四十六条の二 第二十五条第三項又は第四項の規定による命令に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。

違反者には、五十万円以下の罰金に処されます。

※引用元 → 動物の愛護及び管理に関する法律 e-gov法令検索より

自治体の生活環境や動物に関する条例

都道府県や市町村では、生活環境に関することや動物との共生における条例が設けられている場合があります。

例えば、京都市の「京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例」では、以下のように規定されています。

第2章 動物の適正な取扱い
第9条 市民等は,所有者等のない動物に対して給餌を行うときは,適切な方法により行うこととし,周辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌を行ってはならない。

※引用元 → 京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例(野良猫への適切な給餌の基準等,条例に関する情報のまとめページ) 京都市情報館より

この条例には罰則も設けられており、勧告を受けた者が必要な措置を取らなかった場合、50,000円以下の科料に処されます

※都道府県よって条例の有無、罰則規定の有無などは異なります。

こうした条例は、国の法律よりある程度事例が絞られているため、適用がされやすいと思われます。

裁判判例①野良猫への餌付けで55万円の損害賠償

本件は、餌やりする人の自宅や庭で、野良猫に寝床や餌を用意するなどの飼育ないし餌付けを行っていた事に起因する、近隣住民の糞尿被害による損害賠償請求の事案です。

2015/9/17 損害賠償請求事件 福岡地方裁判所

判例「平成26年(ワ)第1961号 損害賠償請求事件」, 2015年9月17日, 裁判所 COURTS IN JAPAN
(最終閲覧日:2021年4月23日)

事案要旨

損害賠償160万円の請求を申し立て。

  • 野良猫への餌付けにより、糞尿の被害を発生させた。
  • 行政機関の指導に従わず、必要な環境の確保を行わなかった。

判決

損害賠償55万円の支払いを命じた。

  • 原告住民の自宅の庭に入り込み排泄するなどし、原告は庭の砂利の入れ替えを余儀なくされた。
  • 近隣住民への配慮を怠り、生活環境を害したと結論付けた。

主文では、

「餌やりをすれば本件野良猫が居着くことになることや、その結果として近隣に迷惑を及ぼすことは十分に認識し得たはずである」
「近隣住民に配慮し、糞尿被害等を生じさせることがないよう、餌やりを中止し、あるいは、本件野良猫について屋内飼育を行うなどの措置をとるべきであった」

としている。

この判例は、野良猫に対する餌付けに関して、以下のことを裁判所が認めたというケースです。

  • 餌やりをすることで、近隣に迷惑を及ぼすことは十分に認識し得える。
  • にもかかわらず、近隣への配慮や糞尿被害等を生じさせないための措置を取らないことは、故意または過失である。

また、この餌やり行為の過程で、途中、行政機関の指導が入っていたこと、被害が及んでいることを認識した上で改善措置を行わなかった点も判決の判断材料の一つでしょう。

裁判判例②猫への餌やり禁止等請求事件。慰謝料204万円

本件は、タウンハウス敷地内において一部の住民が野良猫に餌付けを行っていた事に起因する、タウンハウス区分所有者の糞尿被害による猫への餌やり禁止等請求の事案です。加藤一二三氏の裁判として知られています。

2010/5/13 猫への餌やり禁止等請求事件 東京地方裁判所

判例「平成20年(ワ)第2785号 猫への餌やり禁止等請求事件」, 2010年5月13日, 裁判所 COURTS IN JAPAN
(最終閲覧日:2021年4月23日)

事案要旨

損害賠償645万円の請求を申し立て。(住民17名)

  • 野良猫への餌付けにより、糞尿、悪臭の被害を発生させた。
  • 住宅管理規約に違反する。

判決

損害賠償204万円の支払いを命じた。

  • 洗濯物への異臭の付着、庭が荒れる被害が認められた。
  • 住宅管理組合側は餌やりの中止を求めたが、受け入れなかった。
  • 住宅管理規約に、動物飼育禁止条項、迷惑行為禁止条項があり、野良猫への屋外給餌は管理組合規定違反である。
  • 給餌・給水を止めることは虐待にあたり、動物愛護法に反する。と主張したが、野良猫に対する餌やりを中止しても同条項は適用されないと判示された。

主文による経緯として、

平成14年5月に、少なくとも18匹の猫に対して餌やりを開始。
平成15年、被告とは他に餌やりを行っていた者が不妊去勢手術を施す。被告も費用を負担した。
平成19年5月、本件タウンハウスの区分所有者の総会で、被告に対し猫の飼育を中止するよう求めることを決議し、被告に中止を求めた。
平成19年9月、動物愛護センターより数回、被告に対する指導を試みた。
平成19年10月、被告の餌やりが継続し、悪質化しているとして、三鷹市長及び三鷹警察署長に対して,事態改善に関する要望書を提出。
平成19年11月、被告による猫用トイレの設置、糞尿の始末、パトロールを実施。(判決では、対応が不十分とされた)

また、こちらの判決では、

「住みかまで提供する飼育の域に達している」

と判断している。
また、不妊去勢手術を行い、当初18匹の猫が、4匹減ったこと。譲渡やトイレの設置、糞尿の始末などを行う行為は、

「地域猫活動の理念に沿うものになってきた」

ともある。

こうした判断を鑑みるに、地域猫活動(不妊去勢手術、譲渡、糞尿の始末、近隣への配慮)を行っている場合でも、地域住民の合意を得ておらず、独自に善意で活動をしているだけの場合は、問題が発生した際、その活動家が責任を取る必要がある。

と、言えると思います。

加えて、野良猫に対して餌やりを中止しても動物愛護法違反に当たらない。とする判示は、

動物の愛護及び管理に関する法律
第6章 罰則 第44条
第2項 愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等の虐待を行つた者は、50万円以下の罰金に処する。

この条項は適用されない。ということです。(上記条文は、改正動物愛護法前の当時の条文です)

猫の存在が問題ではない。猫に係る人の問題

野良猫だって好きで野良になったわけじゃありません。捨てられたり逸走したり、野良猫から産まれた野良猫だったり、やむを得ない理由で野良猫になっています。むしろ、自分のことを野良猫だなんて思っていないと思います。そこに食べる物があるから自分の居場所にしているだけ。

猫を捨てる人、餌だけやって他は何もしない人、猫が嫌いで敵視する人、猫を虐待する人。野良猫が可哀想だからと餌を与えて、結果的に野良猫を増やしていることだってあります。

結局のところ猫に係る人の問題なんだと思います。

また、私有地だったら餌やりも問題なしというわけもなく、むしろ問題だらけでしょう。法的観点からも周辺の生活環境に悪影響をもたらせば罰則が科せられますし、近隣住民からの訴訟のリスクも伴います。
仮に近隣住民が何も言ってこない場合でも全員が快く思っていることはありえません。多かれ少なかれ近隣住民の理解や我慢の上で成り立っているものであり、それに甘えて続けていくのは住民同士のトラブルの元なのだと思います。

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のらねこらむプロフィール

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のらねこらむ管理人

2017年4月に新居へ引っ越した直後から野良猫に悩まされる。
日々、野良猫との領地争いを繰り広げています。

対策グッズのほとんどは、実際に買って・試した結果をまとめたものです。
当サイトの情報が皆様の野良猫対策の助けになれば幸いです。
詳しいプロフィールは、こちら

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