北九州市の馬島で猫の不審死のニュースがありました。(2019年7月末)
概要としては、
- 5年前に確認された約90頭の猫が30頭程度に減っている。
- 薬品のようなものが付着した餌が見つかる。
- 泡を吹いて苦しんだりする様子が目撃されている。
といった内容で、動物愛護団体が刑事告発を検討するなどの動きがあるようです。→2019年10月、福岡のNPO法人が馬島に在住の方を刑事告発されていました。→その後、捜査の結果、馬島在住の方は書類送検されたそうです。
要は、多くの猫が毒餌で殺されたのではないか?と伝えるものですが、管理人の記憶では数年前、島の猫を一斉にTNRしていたはずです。不妊・去勢手術を島の猫全頭に行われていれば、自然減するのでは?と思いました。
確かに毒餌のようなものが発見されている、泡を吹いて苦しむ姿を目撃されている。ということで、虐待の可能性も十分にあるのでしょう。一部の猫は。(その後、容疑がかかった住民の方が書類送検されています)
しかし、90頭が30頭に激減しているような伝え方に、ん?少し正確な話じゃなさそうだな。と感じたわけです。
事実関係を調べてみましたので、ご興味があればお付き合いください。
5年前に確認された約90頭の数字の出どころ
こちらおそらくですが、公益財団法人どうぶつ基金主催による全頭一斉TNRを行った際の頭数と思われます。
公益財団法人どうぶつ基金による全頭一斉TNRは、2014年12月11日~12月15日かけて行われています。
そして、この時TNRを行った頭数が79頭。
約90頭の数字からはやや少ないのですが、生まれたばかりの子猫や老齢猫などは手術を行っていないようです。
子猫の数が4頭。老齢猫が1頭。加えて、捕獲漏れの2頭が確認できていた。という内容が報告書に記載されています。
TNRを行った79頭にそれ以外の7頭を加えると86頭となり、約90頭という数字に近いものになります。
公益財団法人どうぶつ基金での実施内容は、以下より確認ができます。
馬島活動報告書(PDF)https://www.doubutukikin.or.jp/wp-content/uploads/2015/08/20a649be98f1916501a0d18a6aa94c52.pdf
馬島(北九州市)まるごと一斉TNR追跡調査報告https://www.doubutukikin.or.jp/activitynews/9067/
全頭一斉TNRは、報告内容によると100%実施できたと記載
公益財団法人どうぶつ基金の馬島活動報告書によると
『一斉TNR(79頭)と、アフターケア(2頭)で100%の島内の猫にTNRを実施することができた。』
100%、TNRを実施できたと伝えています。
全頭TNRできていれば、自然減していくはず。
馬島に住む猫の全頭がTNRされているのであれば、今後数が増えていくことは基本的にはないはずです。これ以上増えないように去勢・不妊しているわけですから、自然減すること自体は悪いことではありません。むしろ想定通りと言うべきでしょう。
野良猫の寿命は短ければ、3、4年、長くて5年と言われています。
2014年12月にTNRを実施しているのですから、すでに4年半経過しています。であれば、自然減するのは当然のことで5年前にいたと言われる90頭が30頭に減ったところで何も不思議なことはないのです。
また、公益財団法人どうぶつ基金が、2015年11月に報告している追跡調査の結果によれば、全頭一斉TNR後、約1年経過した時点の頭数は、約70頭。とのことでした。
ニュースにある『90頭もいた猫が30頭に激減してしまった、その原因は毒餌による虐待の可能性が高い』と読み取れる内容は正確なものではないと思います。
しかし、一つ二つ疑問が湧いてきます。
本当に全頭TNRできたのか?新たに増えてしまっていることはないのか?
現在の馬島の猫達。新たに増えている模様
さて、現在の馬島の猫達の様子は、管理人は現地に足を運んで確認することはできないのですが、猫好きな方が写真を撮られているブログがありました。
不思議なび「猫だらけ!福岡県最小の有人島の馬島は猫天国だった」
https://www.decoration.tokyo/entry/2019/03/22/112517投稿日:2019年3月22日
上記に記載の写真を見る限り、子猫の姿が見られます。そしてなにより写っている猫達の耳先がカットされていません。約10頭ほど確認できますが、1頭も耳先カットされているのが確認できないのです。
2014年12月に島の全頭一斉TNRが行われ、100%TNRが実施できたはずなのに、耳先カットされていない猫が確認できる。
また、2015年11月のTNR後の追跡調査の結果でも、未手術の猫は推定20歳の老齢猫1頭だけだと報告されています。
これらの情報から分かることは、2015年11月以降に新たに増えた猫が最低でも10頭はいる。ということです。
※2014年12月の全頭一斉TNRで、手術済の猫は耳先がさくら耳カットされています。
100%TNRできなかったか、新たに捨てられた猫から増えてしまったか、どちらかであるのは明白だと思います。
※馬島は40人程の島民が住む島です。捨て猫というのも誰かが島に持ち込んだりしない限りはないようにも思いますが。
まとめ
- 2014年に全頭TNRを実施した(79頭。2頭は後日実施)
- 2015年に追跡調査した際、約70頭が確認できた。
- 2019年、島を訪れた方による写真では、子猫と耳先のカットされていない約10頭が確認できる。
よって、多くが自然減、一部が毒餌による虐待(の可能性)。とも言い切れない。TNR活動により、不妊・去勢された猫達の多くが寿命や交通事故、病気などで亡くなったが、この他新たに増えている猫が相当数いる可能性がある。そして、毒餌による変死が一部とは言い切れず、相当数いる可能性がある。という話だと考えられます。
また、公益財団法人どうぶつ基金で行われた全頭一斉TNR(さくらねこTNR)ですが、以下の3つが重要とされています。
- 速攻 スグやる
- 徹底 全部やる
- 継続 続ける
猫が増えてしまっている実情と全頭TNRを実施したという報告内容から、「継続」の部分が十分ではなかった。とも言えるかと思います。
馬島では、全頭一斉TNRを実施して5年近く経過しても問題が解決していない。というのが実態だと思います。