街中で野良犬を見かけることって今のご時世ほとんどないと思います。もし、犬がその辺にフラフラうろついてたとしても、飼い犬が逃げちゃったのかな?と思うのでは。粗暴で毛並みが汚れた風体の犬は、見ることがあったとしても山中など人里離れたところかもしれません。
一方、野良猫といえば、猫島などを代表に野良猫スポットがあるくらい身近なもので、自分の身の周りでもコンビニや通勤通学路で見かけることがあっても不思議はありません。それに、野良猫の糞尿問題で困る地域もあるくらいですから。
野良犬がいないのってなぜか?野良猫が多いのはなぜか?をまとめました。
▼目次
野良犬を見かけない最大の理由
狂犬病予防法により、野良犬は保健所に通報すると捕獲されます。
狂犬病は、犬が持つ狂犬病ウイルスにより、ヒトが感染し発症すると100%死亡するという恐ろしい病気でした。このため、狂犬病予防法を施行し、飼い犬の登録、予防注射、野犬・野良犬の抑留を徹底することにより、撲滅してきた歴史があります。
元々野良犬の多かった日本でしたが、狂犬病予防法の施行に伴い、野犬狩りとも呼ばれる捕獲作業が保健所主導で行われます。その結果として、1980年代以降のしばらくは犬の殺処分が爆発的に増えるわけですが、こうした背景もあり、今では野良犬を見かけることがなくなったとも言えます。
飼い主に捨てられにくい飼い犬
犬、猫共に、終身飼養は飼い主の当然の義務です。どちらも捨てること自体、動物虐待にあたるわけですが、未だに特に猫は捨てられます。
では、犬は捨てられることはないのか?と言えば、心無い飼い主は面倒を見切れなくなったり、引っ越しを機に捨てる人はいるのかもしれません。しかし、野良猫より数が少ないからこそ野良犬自体を見かけることが少ないのだと思います。
これを裏付ける根拠の一つとして、犬を飼うハードルの高さがあります。犬を飼うには保健所または、市町村への登録が必要です。加えて、狂犬病予防のワクチン接種が必要です。それも毎年一回必ずです。他にも外での散歩もリードなどでの係留が必須です。飼うためのハードルの高さは理由の一つにあるのだと思います。
安易に飼えないから安易に捨てることも少ない。
捨て犬が少ない、野良犬になってしまっても保健所で捕獲される。野良犬が繁殖して増える前に対処されていることも野良犬をほとんど見かけなくなった理由の一つかもしれません。
猫の飼いやすさは、捨てられやすさにもつながる
一方、猫の場合、飼うために保健所または、市町村への登録は必要ありません。狂犬病予防接種といった煩わしいこともありません。保護した猫や譲渡された猫をそのまま飼うことができます。
※保護猫の場合は、迷い猫の可能性もありますので、保健所や警察に飼い主から届け出がないか確認の必要はあります。
猫に関しては、飼うときのハードルの低さから、責任を持たずに飼育を始めてしまう方が少なからずおり、そういった飼い主が犬の飼い主より多いことから捨て猫が増える理由の一つと考えられます。
許容されてきた猫の放し飼い
放し飼いの猫を野良猫と見間違えているという話ではなく、放し飼いの猫がいると野良猫との交配の可能性があり、繁殖しやすくなるという観点からです。
放し飼いという飼い方は、今でこそ現代の生活にそぐわなくなり、室内飼いをされる方が増えたことにより少なくなってきたと思いますが、それでも田舎などでは一定数の方が自由きままに放し飼いをさせているということがあったりします。
法律的な観点からすると、動物愛護法の第二条2項に以下の内容がありますが、
「何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない。」
猫が縄張りの中で生活することを踏まえ、習性等を考慮した飼養方法として放し飼いを肯定する方もおられるのかもしれません。
放し飼い自体を悪とする話ではありませんが、放し飼いが許容される環境においては、繁殖の機会が増えることは事実だと思います。
殺処分数から見られる野良犬・猫の数の推測
環境省では毎年、「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」の統計資料を公開しております。
出典元:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」環境省
この資料では、全国の保健所で引き取った犬猫に関して、飼い主からと所有者不明とで分けて数字が出されています。所有者不明≒野良犬/野良猫と仮定するとその数の違いを見て取れます。
抜粋:犬・猫の引取り数
種別 | 飼い主 | 所有者不明 | 合計 |
---|---|---|---|
犬 | 3,726 | 31,809 | 35,535 |
猫 | 10,450 | 45,954 | 56,404 |
個人的には、所有者不明の犬の多さに驚くものですが、このうち返還数が11,338頭ということを考えると散歩中の逸走などによる迷子犬の数もそれなりにいるのだと分かります。また、犬が一匹でうろついていると保健所に通報されるケースの多さも物語っていると思います。(小型犬であれば迷子犬と判断して、中型犬以上は子供などへの噛み付きの危険を考慮して)
それから、体感的な野良犬の少なさ、野良猫の多さから考えると、犬の引取り数に比べて猫の引取り数が少ないように感じられますが、これは保健所で野良猫の引取りを拒否するところが多くなったためです。昨今、殺処分ゼロを掲げた東京都のように殺処分をしないために保健所で極力引き取らないことをしています。(引取らなければ譲渡の手間は減るし、殺処分もしなくてすむ)この方法論は、所有者不明の成猫の引取り数の少なさから見られますし、やむを得ず引き取る必要がある子猫(幼齢の個体)の数の多さからも確認できます。
単純に引取り数から野良犬、野良猫の多さを測るのは難しいかもしれませんが、数の違いは少なからず垣間見られると思います。
なお、殺処分数についても抜粋しておくと以下の通りでした。
抜粋:犬・猫の殺処分数
種別 | 殺処分数 |
---|---|
犬 | 7,687 |
猫 | 30,757 |
以上になります。野良猫は飼いやすく、放し飼いの罰則なく、捨てられやすいし、積極的な捕獲はされないので増えやすい。野良犬よりは断然見られやすいのだと思います。