犬繁殖業者アニマル桃太郎の無麻酔帝王切開虐待事件判決の考察

 長野県松本市で起きた犬繁殖業者「アニマル桃太郎」による動物虐待事件。劣悪環境での飼育、狂犬病予防注射未接種及び無麻酔帝王切開についての裁判の判決が出ました。
結果としては、裁判所が犯罪事実を認めた上で量刑が言い渡されております。

本件は動物虐待の対象となった犬の頭数が多く、無麻酔、無免許の帝王切開の状況に加え、原告側は杉本彩氏が理事長を務める公益財団法人動物環境・福祉協会Evaということもあり、非常に注目度の高い裁判でもありました。

本記事では、アニマル桃太郎の事件の概要、裁判の争点、求刑や量刑の結果、原告側の反応及びその他疑問に感じた部分について考察しました。


※※※以下、本記事を作成にあたり参照した資料※※※

公益財団法人動物環境・福祉協会EvaのHP「長野県松本市劣悪繁殖事業者を刑事告発
環境省HP「動物虐待等に関する対応ガイドライン
衆議院HP「第198回国会 衆議院 環境委員会 第7号 令和元年5月31日 議事録」
長野県HP「松本市の繁殖業者の件について

▼目次

  1. 事件の概要
  2. 裁判の争点
  3. 検察の求刑と裁判所の量刑
  4. 判決を受けた原告側の反応
  5. 原告(Eva)が求めた求刑
  6. 過去の判例から見る量刑
  7. なぜ薬事法違反では告発しないのか?
  8. ドミトールを使用した帝王切開の疑問
  9. 改正動物愛護管理法の厳罰化の主旨
  10. 自治体(長野県)の立入検査・指導は適切だったか?

事件の概要

起訴状などによる事件の概要が以下になります。

長野県松本市の犬繁殖業者アニマル桃太郎は2021年9月、市内2ヵ所の犬舎で1,000頭以上を飼育。内452頭の犬を劣悪な環境で衰弱させ、病気の犬に対して適切な措置をしなかったなどの虐待を行った疑い。
また、2021年4月1日~12月31日の間、犬8頭について狂犬病予防注射を打たせなかった容疑に加え、2021年8月27日~8月31日の間、5頭の妊娠犬に対し麻酔をせずに帝王切開して腹部を傷付けた罪に問われました。

事件が発覚したのは上記の通り2021年以降になりますがアニマル桃太郎における犬の繁殖は30年近く前まで遡るようです。2ヵ所の犬舎は、2003年には出来上がっていたとのことから相当数の繁殖がこれ以降に行われていたと思われます。
この間、事件が発覚するまでの間にも近隣からの苦情が自治体や保健所などに寄せられていたという話もあります。また、長野県でも立入検査を都度行ってきたとのことですが、立入前に清掃を行うなどし実態より良く見せようとしていた供述もありました。

この事件は、県内の動物病院の獣医師の通報により明るみになったもので、通報を受けた公益財団法人動物環境・福祉協会Evaが刑事告発をしました。
起訴状では、2021年以降に起こった動物虐待及び狂犬病予防注射の件についての告発になりますが、それ以前の飼育環境が正常であったかと言えばそうではないと考えられます。しかしながら、通報をされた獣医師やその他関係者の証言、警察の立入捜査の状況を踏まえ、証拠が出揃ったものが2021年以降の容疑となったと思われます。

裁判の争点

起訴状では、以下の三つの罪状が挙げられました。

  1. 犬452頭に対する劣悪環境での飼育による動物虐待(動物愛護管理法第44条第2項)
  2. 犬8頭に対する狂犬病予防注射を打たない狂犬病予防法違反
  3. 犬5頭に対する無麻酔帝王切開を行う殺傷(動物愛護管理法第44条第1項)

このうち弁護側(アニマル桃太郎の百瀬被告)は、①と②については起訴事実を認めます。
しかし、③の無麻酔での帝王切開に関しては、麻酔をしなかったことを否認し、みだりに傷つけていないと主張しました。
よって、裁判の争点は、無麻酔であったか否か及び帝王切開についてみだりに傷つける行為に該当するかになりました。

検察側の主張では、以下の通り「みだりに傷つける」に該当するとしています。

  • 獣医師資格のない被告人が無麻酔で切開手術をすることは強い痛みや苦痛が伴うのは明らか。
  • 手術時にドミトール(鎮痛・鎮静の効果の薬)を使用したと被告人は証言するが、ドミトールは麻酔薬ではなく傷みや苦痛等のストレスを伴い効果が不十分。
  • これらを踏まえ、獣医師資格もなく無麻酔で帝王切開を繰り返したことは、残虐で悪質である。

愛護動物殺傷罪(動物愛護管理法第44条第1項)の違反であり、刑事責任は重大と述べました。

これに対し弁護側の弁論を要約すると以下の通りです。

  • 仔犬の命を助けるための正当な目的。猟奇的、残虐的事件とは性質が異なる。
  • ドミトールを使用した上で帝王切開を行っていたもので、みだりに傷つけることには該当しない。
  • ドミトールの添付書類には、少量で意識消失。深い鎮痛効果、痛覚が消失すると記載があり、鎮痛効果が弱いとは書かれていない。
  • ドミトールが処方された際の医薬品指示書が存在し、手術場所近くの冷蔵庫からドミトールが検出されている。妊娠犬が暴れることなく手術を行えており、ドミトールを打っていたことは明らか。
  • 無麻酔で帝王切開していた証拠がない(証言のみ)。
  • 帝王切開は獣医師に行わせると省令の改正はあったが、獣医師に行わせなかったことが直ちに「みだりに傷つけ」には該当しない。

獣医師から帝王切開の方法を教わっているなど母犬と子犬を助ける目的の観点とドミトールを使用し十分な鎮痛効果がある状態で手術を行っていたという手段の観点両方で弁論されておりました。

検察の求刑と裁判所の量刑

検察側は、452頭の劣悪環境下での飼育による動物虐待、8頭の狂犬病予防法違反、5頭の無麻酔帝王切開の残虐性と悪質さは、刑事責任が重大であるとし、

求刑:懲役1年(動物愛護法違反)、罰金10万(狂犬病予防法違反)

が相当と処罰を求めました。

また、弁護側の反論では無麻酔帝王切開については無罪を主張し、すでにブリーダー業を廃業していること、報道やSNSの投稿などにより十分に社会的制裁を受けたことなどを理由に執行猶予付き判決が妥当と述べています。

これらを踏まえ判決では、

  1. 犬452頭に対する劣悪環境での飼育による動物虐待(動物愛護管理法第44条第2項)
  2. 犬8頭に対する狂犬病予防注射を打たない狂犬病予防法違反
  3. 犬5頭に対する無麻酔帝王切開を行う殺傷(動物愛護管理法第44条第1項)

これら三つの罪について全てを認めた上、無麻酔帝王切開を行う殺傷は、暴行による虐待事案や猟奇的な殺傷事件とは性質を異にするとし、また、被告人に前科がない点、既にブリーダー業を廃業したことなどを考慮し、

量刑:懲役1年及び罰金10万円、執行猶予3年

の判決を言い渡しました。
執行猶予が付いた点を除けば、検察の求刑どおりの処罰となっております。

裁判所の量刑理由としては、獣医師からドミトール投与による帝王切開の方法を教えてもらい手術を行っていた供述は、排斥するに足る証拠がなく可能性を否定できないとしつつも、適切な手術や麻酔措置は講じておらず、獣医師免許を持たない被告が行うべきでなかったのは明らか。24時間対応可能な獣医師が見つからなかったから手術を行っていたとの供述は行為が正当化されるものではなく、当面は交配・出産を停止したうえで対応を検討するほかなかったものであり、その責任は軽視できない。と断言しております。
しかしながら、情状関係を踏まえた上で執行猶予付きの判決を言い渡しました。

判決を受けた原告側の反応

原告側の反応は、理事長の杉本彩氏のコメント共に各メディアで取り上げられております。おおよそニュースサイト等のタイトルで反応は掴めると思います。

『杉本彩さん「この程度かとがっかり」 犬虐待事件でペット業者に求刑』朝日新聞デジタル
『杉本彩さん「納得のいかない量刑」 犬虐待事件で執行猶予付きの判決』朝日新聞デジタル
『涙流し…杉本彩さん「お先真っ暗の判決」犬452匹虐待 無免許で麻酔なし帝王切開 被告に懲役1年・執行猶予3年』FNNプライムオンライン

Evaのホームページ掲載の裁判のレポートでも詳しく書かれておりますが、求刑にも量刑にも全く納得がいかないと述べられておりました。

さて、原告のEvaはどの程度の求刑をのぞんでいたのでしょうか?

原告(Eva)が求めた求刑

Evaのホームページ掲載の裁判のレポートでは、以下のように訴えています。

5件の帝王切開であり法定刑は「5年以下の懲役」となります。また、5件の傷害行為なので、併合罪として、最も重い罪の1.5倍である「7年6月以下の懲役」の中で量刑されることになるはずです。

また、7年6月以下の懲役の求刑を求めるべく、ネット署名などを通じ50,456筆を集め、長野地方検察庁松本支部の検察官に提出しています。

検察の求刑と裁判所の量刑どちらともかなりの乖離があり、全く納得がいかないというのはこれだけの乖離があればその通りでしょう。

過去の判例から見る量刑

では、動物虐待に関する過去の判例ではどの程度の量刑とされてきたのでしょうか?

なお、2020年(令和2年)の改正動物愛護法では動物虐待に関する罰則が強化され、以下の通り厳罰化されております。

動物虐待罪 改正前 2020年改正後
愛護動物殺傷罪 2年以下の懲役又は200万円以下の罰金 5年以下の懲役又は500万円以下の罰金
愛護動物虐待罪 100万円以下の罰金 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

環境省の統計資料「虐待事例等調査報告書」より動物愛護管理法違反の判例を確認してみると直近(令和以降)では、以下のような判例があります。

対象年 裁判所
又は地域
刑罰 動物 事実関係概要
令和元 富山地方裁判所 懲役8月
執行猶予4年
捕獲した猫を衰弱させ棒で付くなどし殺害
令和元 さいたま地方裁判所 罰金200,000円 犬を蹴るなどの暴行
令和2 大垣簡易裁判所 罰金200,000円
※刑法との併合罪
犬を叩きつけ殺害(および妻への暴行)
令和2 甲賀簡易裁判所 罰金100,000円 ボウガンで矢を射て怪我を負わせる
令和2 名古屋地方裁判所 罰金300,000円 店で預かった犬を適切に保護せず骨折などの怪我を負わせた
令和2 京都簡易裁判所 罰金300,000円 犬猫 犬猫200頭を劣悪環境で飼育し死なせた
令和2 神奈川簡易裁判所 罰金200,000円 猫139頭を劣悪環境で飼育
令和3 大阪池田簡易裁判所 罰金100,000円 エタノールを浴びせ火をつける
令和3 富士簡易裁判所 罰金200,000円 犬85頭を劣悪な環境で飼育
令和4 名古屋地方裁判所 罰金300,000円 飼い犬を投げつけ怪我を負わせた
令和4 滋賀県 罰金300,000円 飼い猫を包丁で刺し殺害
令和4 富山簡易裁判所 罰金200,000円 ペットショップで病気や怪我の処置をせず放置し死なせた
令和4 那覇簡易裁判所 罰金100,000円 猫38頭を劣悪な環境で飼育し死なせた

懲役刑とされる判例が少ないため、もう少し遡って確認してみると、

平成28年さいたま県の税理士による熱湯やガスバーナーによる複数猫の殺害とネット上に動画公開をした事件では、懲役1年10月、執行猶予4年
平成29年奈良県の猫を床に叩きつけて殺害し遺棄した事件では、懲役1年、執行猶予3年(廃棄物処理法との併合罪)
平成30年千葉県の猫に対してエアガンで怪我を負わせた事件では、懲役1年6月、執行猶予3年(銃刀法との併合罪)

上記のようなものがあります。
いずれも猟奇的、残虐的で動物を痛めつけることが目的の事件であり、悪質な方法による虐待は社会的影響も大きい事件だったと言えます。

本件では、動物を痛めつけることが目的ではなく(むしろ放っておいたら母犬か子犬のどちらかの命が危うい状況)、手段についてもドミトール(鎮痛・鎮静薬)を用いて帝王切開の手術を行っていることから、目的自体を不当とは言えず、手術の手段が相当性を欠くと裁判所が判断しています。判決でもありますが、世上に見られる暴行による虐待事案や猟奇的な殺傷事件とは性質を異にする、という裁判所の判断は、全く納得いかないほどのものではないとも考えられます。

なぜ薬事法違反では告発しないのか?

過去の判例では、動物愛護管理法違反の他に銃刀法や廃棄物処理法、譲渡などを通じた詐欺罪などを絡めた併合罪とすることでより重い判決が出されています。

今回の裁判でも被告人が自ら述べているように要指示医薬品であるドミトールを所持していたことは、薬事法違反の認識があります(本人の供述「麻酔を所持していると罪が重いから隠していた」)。

にも関わらず併合罪として起訴できなかったのはやはり証拠不十分であったのかもしれません。薬事法違反も合わせて争うのであれば、当然ドミトールを処方した獣医師にも罪が及びます。今回の裁判では、劣悪環境の犬舎の状況から動物虐待は容易に立証できますが、ドミトールの入手経路や入手した事実まで証拠を揃えるとなると一層困難であったと想像されます。

ドミトールを使用した帝王切開の疑問

検察及び検察側の証人として出廷した獣医師の見解では、ドミトールは麻酔薬でなく鎮静薬。意識を喪失させる効果は全くないと述べられております。

また、ドミトールで腹部の腹膜、筋膜、皮膚や子宮の痛みを和らげられるかの質問に対しては、「できない
帝王切開で痛みを感じる場合はどういう状態になるかの質問に対しては、「泣き叫ぶだろうし暴れる
無麻酔帝王切開を一人で行っていたがの質問に対しては、「一人ではできないだろう

と答えています。

しかし、被告人の供述では「ドミトールを妊娠犬に使うとぐったりする犬、眠る犬などがいて痛みを感じなくなる。大人しく手術させてもらえ全然痛がらない」「私一人で別の部屋でドミトール使ってやっていた」と語っています。証人として出廷した獣医師の見解とはかなり相違があります。

次に、ドミトールを取り扱っている製薬会社の公開情報確認してみます。

-> 日本全薬工業株式会社(ZENAQ)- ドミトール https://www.zenoaq.com/products/pd-544.html

添付文書の説明によると『本剤は、フィンランドのオリオン社が開発したイミダゾール系の鎮静・鎮痛剤です』とあり、
『低用量で、犬・猫に対し、筋弛緩を伴った鎮静、鎮痛作用を示します』とし、
『本剤の作用の最大時には、動物は横臥し、外部からの刺激に反応しなくなります。さらに、痛覚が消失し、筋弛緩を示します』
とされています。

なお、弁護側の弁論でも「ドミトールの添付書類には、少量で意識消失。深い鎮痛効果と記載があり」と述べられており、証人として出廷した獣医師の見解とは相違があるのがわかります。

また、被告人は3名の獣医師からドミトールを入手しており、そのうち2名の指導の下で手術の方法を教わっています。加えて、ドミトールを供与することに警戒や難色を示すことはあってもドミトールを用いた帝王切開の方法について止められたことがないとの供述です。
ドミトールを用いた帝王切開の手術は、獣医師においても恒常的に行われていた可能性が十分あると考えられます。

証人として出廷した獣医師は、松本警察に対し「ドミトール単独を使った侵襲性、強い痛みを伴う手術は不適切な手術であり、動物虐待である。」との意見書を提出しております。この見解に齟齬がなければ、一部の獣医師の間で不適切な手術による動物虐待が行われていた(もしくは行われている)場合、獣医師も動物虐待の罪に問われることになります。

本件に登場する獣医師の手術は、どこまで信用に足るものなのか疑問に感じざる負えない、と言われても仕方ないのではないでしょうか?
また、本件以外の獣医師達の間で現在でも行われている方法なのでしょうか?

改正動物愛護管理法の厳罰化の主旨

原告(Eva)は、今回の判決を受けて、量刑に対して全く納得がいかないと述べられております。
動物虐待に関して、2020年の法改正で厳罰化されたにも関わらず事件の悪質性を十分に評価されていないとの見解だと思いますが、法改正の際に厳罰化に至る根拠や主旨はどういったものだったのでしょうか?

以下、令和4年3月に公表されている環境省の「動物虐待等に関する対応ガイドライン」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/r0403a/full.pdf
及び、第198回国会 衆議院 環境委員会 第7号 令和元年5月31日の議事録より確認してみます。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001719820190531007.htm

環境省「動物虐待等に関する対応ガイドライン」P114 – 19 動物虐待罪等の厳罰化等(第44条から第50条まで関係)

近年、動物の虐待等(殺傷・遺棄を含む。以下同じ。)に係る違反容疑の摘発件数は増加しており、依然として悪質な動物の虐待等に関する事件が後を絶たないこと等から、動物の殺傷に関する罰則について、懲役刑の上限が2年から5年に、罰金刑の上限が200万円から500万円に引き上げられるとともに、虐待及び遺棄に関する罰則について、100万円以下の罰金刑に1年以下の懲役刑が加えられ、罰則が大幅に強化された。
依然として悪質な動物の虐待及び遺棄に関する事件が後を絶たないこと等が考慮されたものである。

衆議院「第198回国会 衆議院 環境委員会 第7号 令和元年5月31日 議事録」(生方委員の答弁部分抜粋)

動物をみだりに殺し、又は傷つけるといった動物虐待も、依然として後を絶たない状況にあります。

衆議院「第198回国会 衆議院 環境委員会 第7号 令和元年5月31日 議事録」(西岡委員の答弁部分抜粋)

近年、動物虐待については、凶悪化、また、インターネットを使った虐待の動画配信など、大変深刻な状況がございます。
動物虐待と凶悪な暴力事件との関連性も指摘をされており、動物虐待防止は、国民生活の安心、安全にもつながる重要な問題です。虐待がエスカレートする前に早急に対応することが求められております。

このようにいずれも動物への悪質な虐待が増加していること、依然として後を絶たないこと、凶悪化、また、インターネットを使った虐待の動画配信などの大変深刻な状況を考慮し、罰則の強化に至っております。

Evaの裁判レポートには、厳罰化の背景として「どんなに酷い虐待事件が起きても、適正に裁かれなかったという背景があり、前回の法改正で罰則が強化されました」と記載がありましたが、上記を見る限り適正に裁かれなかったことを理由に厳罰化に至ったとの見解は見当たらないようです。

自治体(長野県)の立入検査・指導は適切だったか?

長野県では動物愛護管理関係監視計画に基づき、原則、年に1回の定期的な立入検査が行われてきました(但し、令和2年の実績では監視指導計画の実施率は78.4%に留まり※、全ての施設に対して立入検査が行えているかといえばそうではない)。
当該施設への立入検査は、2016年から2021年3月までの間に2ヵ所の事業所に対して延べ9回の立入検査を実施したとされています。(記録が残っており公表されているのが2016年以降の9回になります。それ以前も定期立入検査は実施されていたと思われます)
指導に関しては、いわゆる行政指導は行われておらず衛生状態などを口頭及び書面で注意を行う程度に留まっておりました。

※長野県動物愛護管理推進計画の資料(推進計画の第2次改定の概要(PDF:356KB))に記載

こうした状況から長野県の保健所の対応が不十分であったのではないか?なぜ、動物虐待に該当するほどの劣悪環境を見抜けなかったのか?など批判の声が上がります。
これらの意見に対して、長野県では以下のように自治体のホームページで回答をしております。

長野県HP「県民ホットライン」2021年9月分(月別) > 松本市の繁殖業者の件について
-> https://www.pref.nagano.lg.jp/koho/kensei/koho/hotline/202109/hot_2109-11.html

立入検査の実施状況について、以下引用

立入検査の実施状況当該事業者に対しては、鳴き声や悪臭の苦情が寄せられたこともあり、平成28年度以降、令和3年3月までの間に2か所の事業所に対して延べ9回の立入検査を実施し、施設の適正な清掃や飼育頭数の制限等について継続して行政指導を行ってきました。なお、通常立入の際は、事業者の不在等を避けるために事前に連絡を行っています。

立入検査時の確認方法や助言・指導について、以下引用

立入検査時には、動物の愛護及び管理に関する法律に基づき、事業者が遵守すべき事項が守られているかを確認し、必要に応じて助言や指導を行っていますが、監視指導は立入時の状況をもとに行われるため、全ての事業内容を把握することは困難であることをご理解いただければと思います。

また、今後は改正動物愛護管理法の罰則強化や飼育管理に関する数値規制などに基づき、動物取扱業者への指導を強化していくとされています。

行政の対応に批判の声が寄せられるのは事件の内容からしても当然とも言えるでしょう。しかし、行政側の対応にも限界はあります。立入検査にしても抜き打ちで出来ればいいのでしょうが、業務時間中であれ夜間であれ業者との調整は必要です。また、担当者不在を理由に断られる可能性もあります。上記長野県の回答でもある通り、事前連絡をした上で立入検査を行うことはやむを得ずなのでしょう。
加えて、動物の所有者は業者にあり行政に所有権はありません。仮に悪質な状況を目の当たりにしてもその場で差し押さえや保護などはできません。さらに、仮に保護などを行おうとしたとしても本件であれば犬の頭数が1,000頭近くに上ります。この数の犬達をどうやって保護していくのかも難題と言えるでしょう。本件も発覚後の犬達の多くは同業の業者に引き取られたという話です。

長野県知事の阿部知事や松本市長の臥雲市長も事態を重く受け止めていると述べられています。本件を検証し再発防止に取り組むとのことです。


以上になります。
本件の対象動物は犬になりますが、争点となった帝王切開の件で言えば、無麻酔であったり獣医師免許を持たない被告による手術が不適切であったなどでした。事件の状況や判決が示す通り、苦痛を伴う帝王切開が行われていたのは明らかでしょう。
一方で他の動物で考えてみると、愛護動物である牛の出産であれば人の介助を必要とし、介助者の手を膣内に入れて引っ張り出します。鋭利な刃物で切開するようなやり方ではありませんが、母牛の苦痛は当然ながらあるでしょう。もちろん麻酔はしません。
愛護動物以外を考えてみると、巷の鮮魚を取り扱う魚屋、居酒屋はどうでしょうか?イカやアジなどの活き造りは?新鮮な魚(まだ生きている魚)は、捌く時に動かれると危ないので包丁で頭をぶっ叩かれて気を失わせてから速やかに処理されていると思います。当然、麻酔などしません。
他にも動物虐待に関して考えると昨今は馬などの伝統行事でも動物虐待と指摘されますが、金魚すくいはみんな楽しんでいます。
普段何気なく生活をしていると疑問に感じることすら少ないかもしれませんが、本件に限らず動物との接し方は今後どのようにしていくべきか考えていかなければいけないのだと思います。

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