犬は人に付き、猫は家に付く
という諺があるように、猫は住み着いた場所に執着すると言われています。
もちろん住み着いた場所には、寝床や餌場があり、繁殖が行え、天敵など身の危険が少ない、安全な場所を選んでいることでしょう。それでも時折、よく見かけた野良猫を見なくなったり、少し離れた場所で目撃したり、引っ越しでもしたのかな?なんて思うことがあります。
野良猫って引っ越しはするのでしょうか?
前述で住み着いた場所について少し触れましたが、野良猫の習性から考えると理解しやすいかもしれません。
野良猫は自分の縄張り(テリトリー)を持っている
野良猫は、住んでいる場所を中心に、半径200~500m(メスはその半分)程度の範囲を生活圏としています。この中で、住処の付近には寝場所、休憩場所、見張り場所を持っています。
そして、行動圏には、餌場・狩場、休息場所となる一休みできる場所、身を隠せる場所、暖まれる場所、など様々な理由で定期的に訪れる場所があります。
普段はこの住んでいる場所を中心に、自分のテリトリー内をパトロールのように定期的に訪れ生活をしています。
野良猫は自分で餌を確保しなければいけない
群れを作らず、1匹で狩りをする。だから縄張りを持ちます。
この縄張りの中で餌を確保し生活をしていきますので、自分の縄張りを他の猫に取られてしまうと大変です。このため、1日の中で定期的に自分の縄張りをパトロールするように訪れるのです。
そして、他の猫と縄張り争いがあるのもこのためです。縄張りを奪われてしまったら死活問題ですからね。
人だってそうですね、縄張り争いや抗争ってつきもの。任侠やマフィアの世界は、利権が掛かかれば命がけ。やはり死活問題なので。
エサにありつけなければ、引っ越しもある
野良生活では、餌やりする人がいなければ、エサが豊富にあることの方が少なく、飢えればエサを求めて移動する場合があります。そうなれば、住み慣れた縄張りを離れ、新たな縄張りを求めて彷徨うことはあるでしょう。
これは、不幸なことに餌やりする人が病気で入院したり、海外旅行など長期間留守にすることでも起こり得ます。野良猫は、餌やりさんの事情は知りませんから。他に餌を与えてくれる人がいなければ、餌を探し求めるのが普通です。
餌場がなくなったら引っ越しするのか?(管理人の近所の野良猫のケースより)
管理人の近所の野良猫達の中には、住処を移動した猫がいます。
管理人の自宅の近くに猫屋敷があります。この猫屋敷は、雑然とした敷地で広さもそれなりにあったため身を隠す場所が多く、こちらの住民が定期的に餌も与えるため、住処とするには適した場所でした。こちらでは、6匹程の野良猫達が住処として利用していました。(他にも餌を求めて行き来する猫がいるので、10匹以上いる感覚です)
この猫屋敷の住民が一時期、餌やりを止めた時期があり、餌やりを止めてから1ヵ月経過した辺りから徐々に移動をした様子でした。移動後は、住処として使っているのは2匹のみで、他4匹は定期的には訪れているようですが、頻繁に目撃することもなくなっています。
他4匹の移動先は、500m程度離れた先にもう1軒の猫屋敷があるのですが、ほとんどはそちらに移動したようです。
管理人の住む地域では、餌やりをする住民が複数いるため、餌には事欠かない環境です。このためか縄張り争いでケンカをする様子はあまりなく、野良猫達は縄張りを共有できる環境で暮らしています。
・・・後日談ですが、近所の猫屋敷の住民が餌やりを再開し、移動した猫達が再び戻ってくることになりました。
身の危険を感じて、引っ越し
何かしら身の危険を感じれば、移動をせざるを得ない場合もあるでしょう。
住処だった場所に野生動物が訪れるようになってしまったり、人の手が入ってしまったり、冬になり草木が枯れたせいで身を隠す場所がなくなってしまうことだってあります。
また、近所の人が犬を飼い出した。犬の臭いを嫌って移動をすることも考えられます。
縄張りを追い出され、引っ越しを余儀なくされる
新たな餌場、住処を求めて彷徨う流れ猫と縄張り争いになることもあります。ケンカに負けて他の猫に追われれば、引っ越しをせざるを得なくなることがあります。
縄張りを奪う方も守る方も必死です。ちょっと追い払う程度で済まないこともあり、大怪我をしてしまう場合もあるくらいです。本当に必死です。
若猫の巣立ち、母猫の元から新たな場所へ、引っ越す
生後3ヵ月も過ぎれば、母猫は次の繁殖に備え、徐々に子離れしていきます。
メス猫は母猫と一緒に住処に留まることもありますが、オス猫は別です。母猫がきつくあたったり、追い払われたりする場合があります。
オス猫は、生後1年もすれば発情し、交尾をすることができるようになります。このため、近親交配を避けるためには、本能的に必要なことなのでしょう。
※近親交配を避けるためで言えば、縄張り争いも理に叶ってますね。ケンカに負けた猫が他の地域に移動すれば、異なる血を入れて繁殖していけますから。
子連れの母猫の引っ越し
子育ての時期には、数回引っ越しをする場合があります。
- 天敵から身を守るため、より安全な場所を求めて
- 住処の衛生面から移動する
ずっと同じ場所に留まっていると、徘徊して獲物を探す野生動物に襲われる危険性があります。そう思えば、まだ歩けるか歩けないかの仔猫の襟首咥えて移動する理由もわかります。これは、室内飼いの飼い猫も寝場所を移動することがあるように、自然の中で生きてきた祖先がこうして身を守ってきた本能的なものなのでしょう。
また、住処にずっと留まっていれば、不衛生な状況になることも考えられます。そうなれば病気の心配も出て来ます。それから臭いで天敵に気付かれる場合もあるでしょう。こういった理由もあるかもしれません。
母猫が子猫を置いていってしまうことがある。
諸説あるようですが、事実あるようです。
- 引っ越し中に思わぬトラブルに見舞われた
- 忘れられた
- 口減らし
- 人の臭いがついた
引っ越し中に思わぬトラブルに見舞われた
子猫が小さく、自力で歩くことが難しければ襟首咥えて一匹ずつ移動させます。子猫の数だけ新居へ行き来することが必要ですから、それなりに時間と体力が必要です。この間、何もなければいいのですが、途中で雨に降られたり、他の猫に遭遇してしまったり、母猫が怪我をしてしまうこともあります。母猫自身が思わぬトラブルに遭ってしまった場合、子猫の場所に戻るに戻れなくなる場合があります。
忘れられた
母猫に思わぬトラブルがあったとしても、ちゃんと子猫のとこに戻り、残りの子猫を新居へ移動させます。また、猫は数が数えられないため、何匹移動したから終わりというわけにはいかず、全匹移動が終わった後でも前の住処に様子を何度か見に行くことが普通です。子猫の姿が見当たらないようであれば、引っ越しは完了というわけですが、子猫が何かに驚いて隠れてしまい見つからないこともありますし、(移動の最中に)母猫が人からちょっかい出されたり、餌をもらったりすると忘れてしまうことがあるようです。
(次の日でも見に行けば気付くんじゃ・・・とも思ったりもしますが、まだ小さい子猫だと一晩で急激に弱ってしまうことがあります。運悪く雨の日や気温が低い季節だったりすると、気付いた時には手遅れ・・・ということも)
口減らし
餌が十分になかったり、その子猫が病気にかかっていれば、口減らしで置いていってしまうことがあります。育児放棄とも言えるかもしれませんが、全員を生かすことができないと判断すればありえます。餌がなければ生きていけないし、子猫の中に病気の子がいたら他の子猫にもうつってしまうかもしれません。母猫の生きていくための判断というものがあると思われます。
人の臭いがついた
子猫を見かけて保護する方もおりますが、母猫を見つけて返してあげても母猫は面倒を見なくなることがあります。
人の臭い(他の動物の臭い)がついた場合、母猫はそれを嫌がります。人の臭いが残っていれば、この場所が見つかるかもしれないし、他の子猫にも危険が及ぶかもしれない。そう判断すれば置き去りにすることだってあります。
ちょっと触ったり、抱っこするくらいは問題ではないと思いますが、ミルクを与えたりするとダメなことが多いようです。子猫はある程度大きくなるまで自分で排泄ができません。母猫が子猫の肛門をなめてあげて排泄を促しますが、この時、自分が与えたお乳の匂いではないことに気付きます。人から与えられたミルクの臭いを感じ取り、警戒信号をキャッチします。母猫が危険だと判断すれば、そういった行動もありえます。
以上になります。他にも猫嫌いな人間にとっ捕まり、強制的に引っ越しさせられるなんてこともあるでしょう。