“環境省と農林水産省が約10年ぶりに改定する「生態系被害防止外来種リスト」をめぐり、環境省はネコの掲載名を種名の「イエネコ」に改める案を撤回しました。”
先日(8月上旬)このようなニュースが散見されたと思います。本件の経緯としては以下のようなものです。
- 2023年より「生態系被害防止外来種リストの見直しに係る検討会」を設置し、内容の見直しを検討。
- 2025年10月、第5回検討会で複数の委員が掲載名の変更を求める。(掲載名を「ノネコ」から「イエネコ」への変更)
- 2026年4月、リスト案に係る意見募集(パブリック・コメント)を実施。(リストは「イエネコ」表記)
- 2026年6月、環境省より「生態系被害防止外来種リスト」を公表。(リストは「イエネコ」表記)
- 2026年7月、公益財団法人どうぶつ基金がイエネコ表記に反対するオンライン署名を開始、署名は7月下旬に累計7万筆超え。
- 2026年8月4日、環境省はイエネコ表記を撤回し「ノネコ」として掲載する修正案を示す。(7日の専門家会合で修正案を正式決定)
最終的に従来用いていた「ノネコ」としてリストに掲載することになりましたが、ノネコの他にも「イヌ」に関しても改正案の段階では「イヌ」表記で、修正後に「ノイヌ」と改められています。
また、リスト案に係る意見募集(パブリック・コメント)を実施した際には「イエネコ」表記としていましたが、提出された意見の中に「イエネコ」表記に関して懸念や反対の内容は含まれておりませんでした。
しかしながら、2026年6月、環境省より「生態系被害防止外来種リスト」が公表されると、どうぶつ基金やEvaなどの動物愛護団体は「イエネコ」をリストから外す要望書を作成し、環境省へ提出します。この結果、石原環境相は2026年8月4日の記者会見で、飼い猫が逃げれば殺処分されるかのような誤解を招くとし「リストの目的と違った影響が出る危険性が高い」と説明され、最終的に「イエネコ」表記を撤回する流れとなりました。
▼目次
動物愛護団体が「イエネコ」表記を懸念した主な理由
「イエネコ」を生態系被害防止外来種リストに載せることでどのような懸念や問題があるのか、動物愛護団体が表明した主な理由が以下のようなものです。
- 飼い猫まで駆除対象になるおそれがある。
- 猫の殺処分や錯誤捕獲につながる。
- 猫への虐待や違法な殺傷を助長するおそれがある。
飼い猫の駆除の懸念は、石原環境大臣も述べられているように誤解を生じることは、当然あるでしょう。
では、殺処分や錯誤捕獲、虐待や殺傷を助長するという意見はどうでしょうか?
誇張された意見のように感じられる方もおられるかもしれません。おそらく、このリストを見て「イエネコ」だから外にいる猫は殺処分や捕獲、虐待や殺傷を行っても問題ない。と考える人はまずいないだろうという感覚だと思います。
どうでしょう?
日本に住む多くの人は、猫はペットであり愛玩動物としての認知であると思います。もちろん、動物に対して冷酷な一面を持たれるごく一部の人の考えは違うかもしれません。だからと言って、このリストに「イエネコ」と表記されるだけで猫を虐待する奴等にお墨付き与えることになるというのは、やはり誇張された考え方に思えてなりません。
一方で、環境省も説明が不十分だったのは否めません。飼い猫が逃げれば殺処分されるかのような誤解を招く認識に至ったわけですから、もう少し丁寧な進め方や説明があって然るべきだったと思われます。
「ノネコとノラネコ、イエネコの区別が困難なのにイエネコ表記するのはおかしい」
上記は、どうぶつ基金が指摘された環境省事務局に対するものです。
実態として、希少動物を捕食していたネコを発見した際に、その猫がノネコであるかノラネコであるか飼い主のいるイエネコであるかの区別が困難であることは、環境省の検討会の場でも意見が出ています。このため生態系や感染症対策の対処が十分に行えない事例があり、「ノネコ」しかリストに掲載しないと生態系被害防止の意義が損なわれるという意見が出ておりました。
結局のところ現状ではノネコとノラネコ、イエネコの区別の判断は現場まかせであり、「ノネコ」と表記しようが「イエネコ」と表記しようがその場の誰かが判断するだけの話というわけです。であれば、ノネコと表記したところでノラネコも飼い主のいるイエネコも捕獲の対象になってしまうだろうというロジックです。
だから表記名の問題ではなく「ノネコ」(だろうがイエネコだろうが)リストから除外しろという意見です。
外で生活するネコをなくすことが解決の近道
生態系の保全や感染症対策のことを考えると屋外にいるネコは、ノネコであろうがノラネコであろうが飼い主のいるイエネコであろうが大差はありません。屋外のネコは共通の問題を引き起こすため分けること自体に意味がないのかもしれません。
動物愛護団体が考える外猫(野良猫)対策は、TNRや地域猫活動といったものです。外で生活する飼い主のいない猫は、不妊・去勢手術を受けさせるので繁殖はできなくなり将来的にはいなくなるというわけです。TNRや地域猫活動といったものは20年ほど前から存在すると思いますが、今でも活動は続きます。一代限りの猫の寿命を考えれば10年もあれば目に見える成果が出てきても良さそうですが果して。
基本的には、完全室内飼育、適正飼養の徹底。それでも不十分なら犬と同様に畜猫登録、マイクロチップの装着義務化、逸走してしまった猫は飼い主の元へ戻れるように。山林への遺棄もマイクロチップの義務化で抑止力に繋がる。それでも足りなければ(チップを外して遺棄するなどがあれば)罰則強化も。
このような意見を述べると動物愛護家から屋内に閉じ込められるのを嫌がる猫もいる。飼い主からは家の近所の散歩くらいいいじゃないかという意見もあったりします。
猫のことを第一に考えるのは自由だと思いますが、飼い主の見えないところで他所のお家で迷惑をかけたり、動物アレルギーの方を困らせていたり、SFTSやトキソプラズマ感染症などの被害が出ているかもしれません。そのような事があったとしても飼い主は責任を取りませんよね。証拠はない、ウチの子は外ではウンチをしないなどと考えて。
結局のところ、被害に遭われる近隣住民が苦情や相談をしていないだけ(声をあげても大きな問題になっていないだけ)で、周囲の人の我慢に甘えて許されているのが現状の放し飼いだと思います。
以上になります。イエネコによる在来種の被害は、国際的認識です。一例としてニュージーランドでは、2050年までにノネコ根絶するため250万~800万頭の駆除目指すといったニュースも見受けられます。また、オーストラリアでは野良猫200万匹の殺処分を計画するなど国の施策が発表されています。環境保護が先進国に後れを取らないように考えなければいけないでしょう。
